内臓の下垂と痔核の脱出
脱肛は、一般的に肛門から何かが飛び出している状態があることです。痔核が長引いて繰り返し起こり、悪化したものと、内臓の下垂が原因の脱肛もあります。
脱肛の症状と原因
最初は排便時のみ脱出
脱肛は最初は排便時のみ脱出する程度のようですが、酷くなると、しゃがんだり、くしゃみをするだけで脱出するようになります。また、肛門の周りが痛み、脱出した脱肛を戻せない状態になることもあります。
痔核が原因の脱肛
痔核が原因の脱肛は、最初は排便時だけ、痔核が脱出していたものが除々に脱出状態が長引いたために起こるようです。痔核は硬いものも軟らかいものもあり、いぼ痔と呼ばれることもあります。
内臓の下垂が原因の脱肛
内臓の下垂が原因の脱肛は、老人や胃腸虚弱者に多いようです。肛門の粘膜が下垂し、上に保てなくなった状態の脱肛です。脱肛は軟らかい脱出です。脱肛は自然に治癒する事は少ないです。
治療をせずに放置
痛みが無いため治療をせずに放置しておくと、最終的に脱肛が長引き、脱出が戻らず、脱肛が鬱血し、座ることも困難となってしまうことがあります。
脱肛の治療
脱肛は痔核が悪化したもの、あるいは内臓の下垂が原因となるため、病としては深い疾患となります。
痔ろうや痔核より、治療に時間が掛かってしまうことがあります。出来るだけ肛門部を清潔にし、脱出した脱肛は出来るだけ戻すようにします。脱肛改善のためには筋力トレーニングも有効です。
漢方薬で脱肛
脱肛の方は、漢方の脾虚改善薬(エキス剤では効果が薄く、煎じ薬が効果が高いです)と、「新陳代謝の機能改善剤」を併用します。漢方の脾虚改善薬は、多めに服用した方が効果が良いようです。また熱い煎じ薬か、お湯での服用が効果的です。
脱肛の方は筋力トレーニングをすると、治り易くなります。但し、縄跳びやジョギング等のジャンプする運動は、しばらく控えた方が良いです。
脱肛は、いぼ痔が原因?内臓下垂が原因?
貴方の痔は「何」タイプ?
あなたの「痔」は、何タイプかお分かりですか?痔は種類によって治療法が異なります。まず、あなたの痔のタイプを知りましょう。
脱肛と痔核あるいは痔ろうを同時に患っている場合もあります。自己判断に頼らず、医師の診断をお受けすることお勧めします。
どうして?何故?痔が悪化するか、考えましょう。
脱肛と痔(いぼ痔)の原因と病理
痔核は肛門の「うっ血」が原因。痔核は静脈血の塊です。
動物は四本足で立ちます
人間は二本足で立ちます。四本足立ちの動物の腹部血液は、肛門に溜まることはありません。
動物が二本足で立つと
動物が二本足で立つと、腹部の血液は肛門に集まりやすくなります。
でも動物は一時的に二本足で立っても、いつもは四本足で立ちます。だから肛門に血液が溜まりにくいのです。
いぼ痔(痔核)、脱肛は、二本足で立つ人間の宿命
一方、人間はいつも二本足で立ちます。腹部の血液は、肛門に溜まりやすくなります。肛門に溜まった血液(静脈血)は、うっ血となり痔核となります。同時に内臓も下垂してしまいます。
脱肛、いぼ痔は、動物に起こりにくく、人間に起こりやすい病気と言えます。二本足で立つ人間の宿命のお病気と言っても良いでしょう。
肛門周囲の静脈には逆流を防ぐ静脈弁がない
通常、静脈には逆流を防ぐ静脈弁があります。しかし、人間の肛門周囲の静脈には逆流を防ぐ静脈弁が有りません。そのため人間の肛門は、更に血液が溜まりやすくなり、うっ血を起こします。
便が静脈を圧迫
便秘をすると直腸に溜まった便が、静脈を圧迫し更にうっ血が酷くなります。妊娠でも同様に下腹部や肛門のうっ血が酷くなります。
肝臓の門脈圧が亢進
アルコールを飲みすぎると、肝臓の機能が低下し肝臓の門脈圧が亢進します。そのため肝臓に流れ込むはずの血液が、肛門の方に集まり、更に肛門のうっ血を酷くします。また、ウイルス性肝炎や脂肪肝などで肝臓に負担が掛かっても、同様に肛門がうっ血します。
肛門の「うっ血」が原因、痔核は静脈血の塊です。
軟膏や座薬などの表面的な治療では無理です。だから治らないのです。長時間の立ち仕事や座位、妊娠などが原因となる場合もあります。
痔、脱肛の生活養生
痔ろう、脱肛、いぼ痔でお悩みの方。お薬だけでなく、生活や食事等も大事です。
便秘を改善します
- 排便時間を短くします。
- 便を軟らかくします。
- 出来るだけ、排便時にリキまないようにします。
- 肛門周囲を清潔にします。
必要に応じて癖に成りにくく、腹痛の来にくい便秘薬(大黄甘草湯、麻子仁丸、潤腸湯等)を使用します。これだけでも小さな痔核なら自然に治ることがあります。
下半身の血流を改善します
お風呂にユックリと浸かることで下半身の血流が改善します。(ただし痔ろうの方は温めすぎは禁物です)
散歩、ジョギング
よく歩き下半身を使うことが大事です。下半身を使う運動は人体下部の肛門部の血流を改善します。(陸上選手には痔核の人は殆ど居ません)
適度の運動を行い、筋力アップに努めます。筋力がアップすると脱肛は改善しやすくなります。但し疲労は禁物です。
痔の食養生
痔核、痔ろう、脱肛、いぼ痔の方の食養生を解説します。
アルコールの量と回数を減らします
アルコールは、肝臓、肛門部の血流が低下します。深酒、連日の飲酒はさけましょう。
- 食事をして腸で吸収された栄養物は、血液に乗り、まず肝臓に運ばれます。食物は肝臓で代謝され全身に運ばれます。口から入れたものは、すべて肝臓に運ばれると考えても間違いではありません。
- お酒は肝臓を疲労させます。
- 肝臓が疲労してくると、腸から来た血液は肝臓を通過できずに、肛門の方へ逆流します。
- その結果、肛門がうっ血し、痔は酷くなります。
過度の刺激物、辛い物は避けます
からし、一味、トウバンジャン、タバスコ、キムチ、、、、等。
油っこい物、甘い物は過食しないようにします
油っこい物は、血液をドロドロにします。血液が流れにくくなり(漢方で言う瘀血の状態)、痔は悪化します。
甘い物は、免疫力を低下させます。砂糖は小腸で発酵しガスを出します。そのガスは小腸内の最近叢(多くのリンパ球は小腸に集中している事が分かっています)を痛め、腸内環境を悪化させます。