2022年9月26日。写真は、大分県豊後大野市、原尻の滝です。
胃内停水と舌診
東洋医学では望診で皮膚の表面から身体の内部の変化を見ます。望診の中の眼瞼内側の粘膜や舌診は粘膜を通じ診るため、より細かく身体の変化を診る事ができます。
舌診
舌には脂肪が付かないので、舌診では内臓筋肉の状態と内臓の浮腫みが分かりやすいです。また舌と舌苔の乾燥具合を診て、燥湿を判断すると同時に陰陽寒熱も診ています。
消化器から繋がった舌の肥痩を診て消化器の筋肉の強さが推測できます。同時に舌の浮腫み具合を診て、内臓の浮腫みが推測できます。舌の周囲につく歯形、歯切痕を診て胃内停水の状態を把握します。
胃内停水
胃内停水は東洋医学の独特の理論です。酷い場合は、腹診で振水音と言う音が聞こえます。軽い場合は胃の浮腫みと捉えられます。胃から繋がった舌での浮腫み、歯切痕を診ると、胃内停水の状態を把握しやすいです。
胃内停水には虚実があります。半夏の胃内停水が実証。白朮、茯苓の胃内停水は虚証です。
水毒と胃内停水
漢方の胃内停水を詳しく説明します。
病因である病気の原因を気毒、血毒、水毒の3つに分けます。その水毒の大きな部分を胃内停水が占めています。漢方の病因で考えると、あらゆる病気の原因の3分の1を占めていると思える程です。
舌診
鏡で貴方の舌を診てみて下さい。舌の周囲に歯型が付いている方が多いと思います。胃内停水には2種類のタイプが有ります。
- 歯形がクッキリされている方は胃内停水の実証です。
- 柔らかく弱く付いている方は胃内停水の虚証の方が多いです。
胃内停水の実証は、半夏の証です。胃内停水の虚証は、白朮茯苓の証です。
半夏の証
「半夏の証は水が胸から上に上がる」タイプです。
- 痰として上がれば、喘息や気管支炎。例、小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、越婢加半夏湯
- 鼻水として上がれば、花粉症、アレルギー性鼻炎。例、小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯
- 口中へ上がれば、嘔吐。この体質の方は妊娠悪阻も酷い可能性があります。例、乾姜人参半夏丸、小半夏加茯苓湯。
白朮茯苓の証
白朮茯苓の証は脾虚や胃腸虚弱を生じます。
- 胃内停水が動揺し、症状が上に出ます、升の症状。眩暈、突発性難聴、顔面麻痺。例、苓桂朮甘湯
- 胃腸が弱ると下痢や虚弱、体力低下、降の症状、他様々な症状、病態が生まれます。例、六君子湯、当帰芍薬散
胃内停水の食養生
胃内停水と水毒は食養生でも改善、予防が出来ます。
- 蒸散作用のある葉野菜。
- 利水作用のあるウリ科のキュウリ、スイカ、メロン、カボチャ、トウガン、ゴーヤ他
- 暑がりの人や暑い夏にはナス科のナスビ、トマト、ピーマン、パプリカなども胃内停水を除きます。
- また菌糸体、キノコも温和な利水剤です。
- 意外と強力なのはトウモロコシです。トウモロコシの毛は南蛮毛と言う漢方薬で利水作用が最も強い生薬の一つです。トウモロコシの実も同様な利水作用があります。
茯苓飲の虚実
胃内停水や水毒の為の漢方薬があります。
茯苓飲
気虚に対する四君子湯と言う漢方処方があります。人参、朮、茯苓、甘草の4味で四君子湯になります。常用として大棗、生姜を加え6味で用います。
この四君子湯の人参、朮、茯苓、甘草から甘草を抜き、陳皮、枳実を加えたのが、茯苓飲と言う水毒と胃内停水の人向けの漢方処方です。浅田宗伯は茯苓飲を「此方は後世の留飲、胃内停水の主薬なり」と言っています。少陽病の虚証に使うとなっている漢方の教科書もありますが、太陰病の虚証に使うとなっている教科書もあります。
茯苓飲の中の枳実は気塊に対応する薬味です。四逆散や大柴胡湯の気塊に対応されている薬味でもあります。枳実を含む茯苓飲は虚証に使われますが、それほどの虚証とは捉えにくい面も持っています。お気をつけて。
二陳湯
茯苓飲は白朮茯苓タイプの水毒の主薬です。
より実証の胃内停水である半夏タイプには二陳湯が主薬となります。小青竜湯証の病因は半夏証の胃内停水です。小青竜湯にも半夏は含まれます。それでも効果の悪い時は二陳湯を合方します。二陳湯合小青竜湯です。