脳動脈の血行障害
脳卒中は、急激な脳動脈の血行障害により生じる麻痺や運動障害、意識障害を起こす病態の総称です。
脳卒中には脳栓塞、脳血栓、脳出血、脳軟化、くも膜下出血等が含まれます。
脳栓塞
脳栓塞は、心臓弁膜症等の方に多いです。心臓の収縮力が弱く機能が低下すると心臓内の血流が停滞します。血流が停滞すると血栓ができやすくなります。心臓等で出来た血栓が脳内に入り、脳内の血管を防ぐ事により起きる脳卒中の一つです。
また心房細動になると、心房中に血液がうっ滞し血液が固まりやすくなります。固まった血液が血栓として脳に運ばれると脳梗塞となります。
脳血栓
脳血栓は、脳内の血管に血栓が生じることにより、血管を塞ぐ脳卒中です。これらの脳栓塞や脳梗塞により、脳内の血流が部分的に低下し脳軟化が生じてきます。
脳卒中の症状と後遺症
症状
くも膜下出血など脳卒中で出血が軽い場合は、一時的に失神、言語障害、知覚障害等を起こします。また出血が酷い場合は、突然に卒倒し意識が無くなることがあります。
脳卒中の発作の前に、前兆として頭痛、めまい、耳鳴り、言語障害、興奮等の前駆症状があることがあります。
脳卒中の他の症状としては、呼吸が大きくなる、いびきをかく、大小便の失禁、あくび、嘔吐等があることがあります。
脳卒中の後遺症
脳卒中の脳栓塞、脳血栓、脳出血、脳軟化、くも膜下出血等の後遺症では、半身不随が最も多いです。
顏の表情が変化し、言語障害、麻痺等が残ります。後遺症は梗塞や出血の部位と程度により、一人一人症状が異なってきます。
脳卒中。脳梗塞、くも膜下出血、他の脳内出血の後遺症に対する東洋医学の考え方
漢方治療
漢方薬で、脳卒中の半身不随や麻痺の回復を早める薬方は数多くあります。また過去の文献でも、後遺症が回復した例が数多く残されています。
太陽堂漢薬局では、リハビリと平行し漢方治療を行うことが大事と考えています。また東洋医学の精神神経、自律神経を現す五志の憂の状態でも脳卒中の予後が、大きく変わると考えています。
交感神経は戦うための神経
自律神経の交感神経は、戦う神経です。私たちが、まだ動物だった頃に敵と戦うための神経です。敵と戦うため、エネルギー源として肝臓からグリコーゲンを放出し血糖値を上げます。同時に心臓の機能を高め、抹消血管を収縮させ、血圧を上昇させます。更に敵に傷つけられても最小限の出血にするため、血液を固まりやすくします。
その為、交感神経が昂ぶると、当然に血液は固まりやすく血栓が出来やすくなります。同時に血圧が上昇するため出血も起こしやすくなります。これが脳卒中の脳梗塞や脳内出血の大きな原因となります。
太陽堂漢薬局では、脳卒中の原因であるイライラやストレス等の精神的昂ぶりや、心配のし過ぎ等の自律神経の異常も同時に治療していきます。
脳梗塞と脳内出血の内服治療
脳梗塞は脳内の血管に血栓が詰まったことにより生じます。その為、西洋医学的には再発防止に血液を固まりにくくする抗血栓薬が使用されます。
抗血栓薬は脳梗塞や心筋梗塞の予防で繁用されます。当然ですが血を固まりにくくする目的で飲むお薬です。その為一方では出血をしやすい状態にもなります。
また脳梗塞と脳内出血は一見、逆の病態のような感じがしますが、しかし脳内の血管の状態はどちらも似たような状態です。人により結果として、脳出血になったり、逆に脳梗塞になったりしているだけです。
脳梗塞や心筋梗塞で使用する抗血栓薬を服用中の方は、出血をしやすい状態になっています。日頃より打っても無いのに青あざが出来るような症状が出た時は、主治医に相談をしなければなりません。梗塞は予防できたが、脳内出血を起こしたと成らない様に。
漢方の治療では、脳内出血の場合でも脳梗塞の場合でも漢方の証に基づき治療され、出血を招くことはありません。安心して予防治療ができます。但し抗血栓薬を服用中の患者さんが漢方の駆瘀血剤を同時服用すると、抗血栓薬の働きが強くなります。気を付けて下さい。
脳梗塞、脳内出血の再発防止、後遺症の治療は、私ども漢方の専門家にご相談ください。
漢方治療例。脳卒中
脳出血発作後の後遺症67歳男子。漢方処方類方鑑別便覧より引用
6ヶ月前に脳出血の発作で倒れ、さいわい回復したが、半身不随が残っている。かろうじて物につかまって立てる程度である。
腹候その他から、明らかに大柴胡湯証とみてこれを投与したが、2週間たっても、4週間たっても、まったく変化がない。もう一度、ていねいに診察してみたが、上記の自他覚症状に変化はない。
どう考えても大柴胡湯なのであるが、ここで続命湯に転方してみた。その後はめきめきと回復し、物につかまって歩けるようになった。4、5ヶ月でほぼ普通の生活ができるようになった。
続命湯
ここで使われたのが続命湯です。続命湯には大続命湯と小続命湯とあります。大続命湯は一見すると大柴胡湯証に見えるタイプに使用します。小続命湯は附子剤になります。
一般的に続命湯と言われるのは大続命湯のことです。
左右の麻痺で異なる漢方薬
加減潤燥湯、加減除湿湯と言う漢方薬があります。東洋医学では左は血、右は水と言われます。
血は熱なりですので、左の病態は血毒で熱を持ち乾燥していると考えています。その為、左の麻痺には加減潤燥湯を使用し潤の治療をします。
右は水ですので、右の麻痺の水毒の病態には加減除湿湯で水毒を除きます。
くも膜下出血後の後遺症
太陽堂漢薬局で、くも膜下出血の後遺症の相談を受けた事があります。
患者さんは40代の男性です。くも膜下出血を2年程前に起こし西洋医学のリハビリを続けているが改善しないと相談を受けました。
車椅子で太陽堂漢薬局に来られたました。歩く事もしゃべる事も出来ませんでした。左側は手も足も完全に麻痺していました。左手を開くことも閉じるも出来ない状態でした。右手もハシを持てない、字も書けない状態でした。
私はこの患者さんに加減潤燥湯をお出ししました。
回復し仕事も復帰
加減潤燥湯を服用初め、少しづつですが右手が動き出しハシを持てるようになりました。私は手と足の神経回復のリハビリをお教えしました。
最後は、その患者さんは車椅子も使わず普通に歩いて来られる様になりました。言葉も回復し喋れるようになり通常の生活、元の仕事に復帰されました。
発作後、数年経過
発作後、数年経過している場合は回復は難しいと言われます。しかし諦めないで。漢方の不思議な力を信じ取り組んで見て下さい。