病が進行する太陰病から少陰病

漢方コラム

2023年3月24日。写真は、青森県、奥入瀬谿谷です。

病が進行する陽明病から太陰病へから続く

太陰病の下焦、中焦

下焦の陰証

  1. 下腹部、下焦の腎虚により、親から頂いた先天の気が衰えます。それにより熟地黄の適応する白内障、前立腺肥大等が現れます。その他、腎虚には様々な病状が有ります。
  2. また下焦の血虚により当帰、芍薬、川芎などを代表とする貧血、子宮内膜症、不妊症他、様々な病状が出てきます。熟地黄は腎の血虚、当帰は肝の血虚になります。
  3. 熟地黄、当帰、芍薬、川芎で四物湯が出来あがります。四物湯が基本に様々な薬方が発展していきます。

中焦の虚

中焦の虚状は主に脾虚と言われる病態が多いです。脾虚には2種類あります。

内臓筋の弱い脾虚

内臓筋の虚状です。内臓筋が弱く胃腸機能の低下や腹痛、内臓下垂などを起こします。桂枝湯から発展した桂枝加芍薬湯、小建中湯などの建中湯類の適応です。黄耆建中湯、帰耆建中湯、当帰建中湯、他。

胃内停水を病因とする脾虚

建中湯証と異なるもう一つの脾虚です。胃内停水を病因とする白朮、茯苓証に白人参が加わった白朮、茯苓、人参証の気虚です。代表処方では四君子湯があります。

舌の周辺に歯形が付いている人は胃内停水が有ります。冷え性で筋肉が柔らかく歯形が有れば白朮、茯苓タイプです。暑がりで筋肉がシッカリし歯形が有れば半夏タイプの胃内停水の人が多いです。

この四君子湯と下焦の血虚の当帰、芍薬、川芎が加わり当帰芍薬散が出来ます。また中焦の四君子湯と下焦の四物湯を合わすと気血両虚の八珍湯になり、十全大補湯へと発展していきます。

日常の健康な体質的病位と食養生

太陽病は表寒」、「陽明病は熱証」、「少陰病は心臓機能まで低下した陰証」です。どれも生きて行くには厳しく激しい状態です。それらと比較すると、少陽病と太陰病は少し落ち着いています。そのため多くの人が、病気でない日常生活を体質的には少陽病位か太陰病位で生きています。

ガッチリ、筋肉が締まって、寒さに強い、舌が乾燥、他の実証と言われる人は陽証の少陽病位。痩せ型、筋肉が柔らかい、寒がり、舌が湿っている、他の虚証と言われる人は陰証の太陰病位。

少陽病位で実証の人は限りなく陽明病位に近くなります。逆に少陽病位で虚証の人は限りなく太陰病位に近くなります。慢性病でも神経痛や痛み、膀胱経などの表寒の疾患を除くと少陽病位と太陰病位の患者さんが圧倒的に多くなります。

食養生では少陽病位の陽証、熱証の人は、生野菜や少しアク、苦みのある食材を多くします。逆に太陰病位の陰証、寒証の人は、火を通した温野菜を多くし、アク抜きを十分にします。そして酢や生姜料理、味噌料理や発酵食品など身体を温める食材を増やしていきます。

陽明病の白虎湯には、粳米、玄米が薬味として入ります。玄米を常食できるのは、陽明病位の熱証の人だけです。

少陰病

本来の意味の陰病は、太陰病の次の少陰病から始まります。太陰病位にて下焦から中焦の消化器まで犯された身体は、少陰病位では心臓まで犯されます。

内臓が弱り心臓まで虚したのが少陰病位です。虚証のみで実証の人はいません。体表が冷え、内臓も心臓も弱り冷えます。体表では表寒で悪寒がし四肢厥逆、手足が冷えるなどです。内臓が冷えているので内臓熱は無く、舌に苔が無く湿潤しています。東洋医学で言う心の臓が弱ったために舌乳頭が消失し舌の表面が鏡の様にツルツルになった鏡面舌を呈する人もいます。食べた穀類がそのまま排便される下痢。消化不良で食べ物がそのまま排泄される完穀下利になる人もいます。脈証は、沈で微脈になります。

少陰病は、内臓も体表、筋肉、骨格も陰証で代謝が落ち冷えている状態です。急性病でも激しい下痢が続くと、1日から数日で少陰病まで落ちる事が有ります。

また発病初期より少陰病を呈する直中の少陰と言う病態も有ります。免疫力の落ちた方や高齢者、体力が落ちた方などが、例えば風邪を引かれると最初から少陰病の風邪を引く事があります。真武湯や麻黄附子細辛湯の出番です。

病が進行する少陰病から厥陰病へに続く