薬用人参の色々

東洋医学概念

2020年8月3日。写真は、韓国の興仁之門、東大門です。

長白山人参

朝鮮人参は漢方を勉強し始め、最初に興味を持ち、こだわる生薬です。
日本では御種人参とも言われています。江戸幕府が栽培を推奨し島根県で栽培されていました。江戸幕府からの種、御種の名前が付きました。

白参

白参が出来るまでの工程です。

  1. 栽培は、一坪程の土地に種を何十個も植えます。そして毎年、間引きをしていきます。
  2. 間引きを2年目にされた人参が2年根、3年目の間引き人参が3年根です。お土産で売られている朝鮮人参です。
  3. 間引きを繰り返し、1坪の土地で6年目に1本だけ出来上がります。それが6年根です。
  4. 人参の皮と髭部分には苦みのサポニンが多く毒があります。6年根の皮と髭を取り去ります。髭去り皮去り人参が出来上がります。最高の人参です。
    取り去った髭皮部分は日本に輸出され、漢方エキス剤に使われています。
  5. 薬用人参の細胞膜は強靭で、煎じても有効成分が抽出されにくいです。
    そのため髭去り皮去り人参を今度は乾燥させます。叩くとコンコンと金属音がするまで乾燥し固めます。
    細胞膜が弱まり有効成分が抽出されやすくなります。

朝鮮人参の有効成分は、一般に言われる苦みのサポニンではなく、甘みのジンノサイドです。

様々な職人さんが、長年の技で関わります。そして煎じ薬の原料生薬になります。
漢方太陽堂が使用する白参が出来上がります。

紅参

朝鮮人参を蒸して出来る薬用の紅参をご紹介します。

紅参が出来た物語

その昔、中国の生薬屋さんが薬用人参を買い付けに朝鮮に行ったそうです。
朝鮮で色々な人参を見ました。しかし品質が悪く苦みがあり買い付けをしなかったそうです。

そのため朝鮮では人参を蒸す事を試みました。蒸すと苦みの成分がエキスとして落ち、甘みの成分が残ります。

暫くして、同じ中国の生薬屋さんが朝鮮に行きます。蒸した人参を見て、これは良いと買い付けしたそうです。それが紅参です。

薬用人参と血圧

薬用人参を服用すると、血圧が上昇する人がいます。
しかし動物実験では、薬用人参服用により血流が良くなるため、血管抵抗が減少し血圧は逆に下がります。

苓桂朮甘湯証に人参

血圧の上昇は、胃内停水のある人間の苓桂朮甘湯証の体質の方に起きます。薬用人参に潤で身体を潤わす、水を呼ぶ働きが有るからかもしれません。

血圧の上昇するタイプの方は薬用人参を紅参に変えると、血圧が上がらなくなる人が多いです。これも紅参の働きです。

薬用人参の種類

薬用人参は、朝鮮人参、長白山人参の事を言い、漢方薬としては一般的に1種類が使われています。
しかし人参だけでも様々な薬用人参が有ります。

漢方太陽堂の人参

漢方太陽堂では、白参を2種類、竹節人参、紅参、黒参、党参、太子参、西洋参の8種類を患者さんの身体の状態に合わせ使い分けていきます。

今回は各種人参とその働きの一部ご紹介します。
やや専門的になります。

各人参の働き

白参

白参は、2種類を使い分けます。甘い人参とやや苦みのある人参です。
補気、元気を出し、新陳代謝を高める働きの人参と清熱、炎症を取り、機能亢進を抑える人参です。
虚証で体力が無く、体質的にも弱い人と実証で体力が有り、体質的にも強い人で使い分けます。

竹節人参

炎症性の疾患に使います。
肝炎、胃炎、激しい咳などです。

紅参

白参を蒸したものです。
瀉剤としての苦みの成分が抜けるため、人参本来の働きが増します。

黒参

黒参は、紅参を更に蒸した人参です。
人参の芯の中心部の成分に近くなると考えられます。
心機能の低下した心不全、弁膜症、心機能を判断するBNPが高い人に使用し、心機能を高めます。

党参

白参服用にて血圧が上昇する場合があります。その時に白参の代用として党参を使用します。

太子参

昔は皇帝の子息しか飲めなかった人参の意味で太子参の名が付きました。
貴重な人参です。白参と補気の強さで使い分けています。

西洋参

インディアンがアメリカ大陸で使っていた伝統薬です。
見た目も白参と似ています。補気の作用は非常に強く、気力体力が落ちている患者さんに使用します。

薬用人参とは少し異なりますが

田七人參

田七人参は三七人参とも言われます。3年から7年で収穫する意味から付けられました。2種類を使い分けます。
20、30頭級は瀉剤、清熱、血液の流れを改善する力が温和なので妊娠中の痔核等に、或いは弱った人に使用します。
120から180頭級は瀉剤として効果が強く止血作用も強力です。一般の痔核や出血性疾患、吐血、喀血、打撲、むち打ちなどの事故、狭心症等の血栓、血滞に用います。

玄参

本来の人参と異なります。
黒い人参で東洋医学の臓腑経絡の腎に配当され潤の働きが強いです。
気管支などに潤いを付け、切れにくい濃い痰などに使用します。

丹参

これも本来の人参と異なります。
中国の家伝薬として使われていました。中焦から上焦の駆瘀血剤です。
毛沢東の心筋梗塞が良くなったことで有名になりました。血流を良くし脳梗塞などの血栓症に使用します。