掌蹠膿疱症

その他の皮膚病

掌蹠膿疱症の原因は

掌蹠膿疱症は身体の内側で起きる免疫反応です。その結果として手掌、足掌に生じます。

掌蹠膿疱症では、一部の薬物や歯の詰め物、金属アレルギーなどが誘引となる場合が多いです。また扁桃炎や歯周病なども誘引となります。
漢方太陽堂の患者さんではインプラントの金属が原因と思われる症例もありました。

掌蹠膿疱症は無菌

掌蹠膿疱症は、無菌で感染はせず、人には移ることはありません。患部は膿が溜まり水疱が白から黄色、又は濁っています。

掌蹠膿疱症と間違えやすい疾患に水疱があります。主婦湿疹の場合、手掌に出来る水疱は透明です。また精神的ストレスによる手掌の発汗が原因の汗泡も水泡は透明です。

掌蹠膿疱症の漢方治療

また、ステロイドの使い過ぎによるステロイド皮膚炎でも手掌に膿疱ができます。掌蹠膿疱症と似た症状が出ることがあります。一般的に痒みがありますが、ステロイド皮膚炎は更に痒みが強い傾向があります。

東洋医学の証の病状、体質的傾向は、ステロイド皮膚炎も掌蹠膿疱症も同様になります。

掌蹠膿疱症は、柴胡剤、解毒証体質改善剤、手掌煩熱に対応する方剤等で良くなる方が多いです。東洋医学の得意分野の一つです。

掌蹠膿疱症とステロイド皮膚炎、どちらにしても東洋医学的には同じ手掌の証、治療法になります。食養生としては白砂糖を減らし緑の野菜、特に火を通さないと食べられない濃緑野菜を増やした方が治りが早くなります。

掌蹠膿疱症の漢方薬

体質的に皮膚に水分が多い体質と油分が多い体質で使う漢方薬が異なる事があります。
皮膚に水分が多いタイプは色白の人が多いです。逆に皮膚に油分が多いタイプの人は色黒の人が多い傾向になります。
それにより掌蹠膿疱症に使用される漢方薬が異なる事があります。いつもそうだとは言えませんが1つの目安になります。

十味敗毒散加連翹

どちらかと言うと色白の人の掌蹠膿疱症に使うことが多い処方です。十味敗毒散はステロイドによる副作用の皮膚炎にも使用されます。

この処方は日本の華岡青洲の家方です。荊防敗毒散から作られたと言われています。
皮膚病が身体の内の毒素から生じていると考え、それに対する解毒剤の処方です。
処方中の荊芥、防風、桔梗、柴胡、川芎、桜皮は解毒目的です。茯苓、甘草、独活、生姜は解毒の補助になります。
また解毒作用の強い連翹を加味することが多いです。

温清飲加連翹

色黒タイプに使用する漢方薬です。よく皮膚の状態を渋紙のようだと表現されます。皮膚は乾燥気ぎみです。血虚に対する四物湯と血熱に対する黄連解毒湯の合方処方です。
肝臓の解毒能力を高める薬方です。これにも解毒作用のある連翹を追加します。

柴胡清肝湯

色黒タイプに使用する漢方薬です。日本の後世派一貫堂の経験方です。
元々は腺病性体質の改善薬です。東洋医学の臓腑の肝、胆、三焦経の風熱である炎症を除く働きです。
痩せ型で筋肉質でくすぐったり屋さんです。特に東洋医学の肝経に沿った部分に過敏な人が多いです。
四物湯と黄連解毒湯の合方の温清飲に桔梗、薄荷、牛蒡子、栝楼根を加えた薬方です。

荊芥連翹湯

これも色黒タイプの漢方薬です。柴胡清肝湯と同じ一貫堂の経験方です。一貫堂医学で言う解毒症体質に用いられる処方です。
柴胡清肝湯の加減方になります。柴胡清肝湯は幼少期に用い、青年期には荊芥連翹湯を用いる事が多いとなっています。
しかし、それに拘らず現実には大人でも柴胡清肝湯と荊芥連翹湯を使い分けた方が良い場合が多いです。

三物黄芩湯

手掌煩熱に使用する薬方です。金匱要略の婦人産後病が出典です。
出産後に四肢が煩熱し苦しむものが目標の薬方です。
産後に限らず、四肢が煩熱し手足に熱感を感じる場合、手足を布団から出したがり冷たい物に触れると気持ちが良く、好みます。

三物黄芩湯は乾地黄、黄芩、苦参の三味処方です。四肢煩熱の手掌煩熱から掌蹠膿疱症に使われます。

ご婦人の掌蹠膿疱症

漢方太陽堂と患者さんとのかけ橋。毎月お配りしています。
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漢方改善例報告かけ橋。掌蹠膿疱症

昭和42年生、女性

掌蹠膿疱症の相談を受けた。

見ると両手、両足に膿疱が出来ている。長年のステロイド治療の副作用の為か爪はカンジタに侵されている。
当時20代後半の女性で人前に手を出せず、精神的にも辛そうである。

糸練功で調べると、胆の腑の瀉、3合2プラス。化膿の強い湿熱証である。掌蹠膿疱症では割合多いタイプの証である。
薬方は化膿を止め菌を除去するための煎じ薬、葉緑素製剤、化膿症疾患の為、発表、発散の働きのある粉剤を投与。

15日後、4合1プラスに改善。順調な滑り出しである。
2ヵ月後、6号1プラス。改善のスピードがやや低下。手の膿疱症は最初より少し良い程度であるが、足の症状は殆ど変わらない。

6ヵ月後、両手は殆ど改善。右足も僅かに症状が残るのみと成った。
しかし左足は踵が角化し膿疱もかなり残る。

その後、根気良く漢方治療を続け、2年後、完全に膿疱は消失。後、暫らく再発防止をすれば治療終了になると思われた。

しかしこの時、妊娠。大事を取り漢方治療を中止。漢方治療を中止した為、妊娠中に少し膿疱が出てくる。

出産後、漢方治療を再開。この時点で糸練功の結果は7合プラス3。
漢方治療再開6ヶ月後、10合プラスマイナス。膿疱は完全に消失。
その後、進行性指掌角皮症の治療も行い、漢方治療再開1年後、全ての治療を終えた。