2020年11月27日。写真は石川県、兼六園。冬支度、雪吊りです。
お米、蕎麦、塩
お米
- もち米は、温でエネルギーが大きく、体力が落ちている時などに合います。風邪などの時に作るお粥や重湯は、もち米の方が効果が良いです。
- 白米は平。
- 玄米は、涼で白米より潤の働きが強いです。玄米食は冷え性の人には要注意です。毒消しには温で燥の働きの小豆、副食に温の玉ネギ、生姜、ニラなどを添えると良いです。
そば
- お蕎麦は涼です。冷え性の人や冬場は注意です。身体を温める薬味のネギやワサビ、生姜、一味、青紫蘇などを添えると良いです。
- 岩手の郷土料理のかっけ料理は、涼の蕎麦を温のニンニク、温の味噌を使用し食べます。蕎麦の身体を冷やす作用をニンニク、味噌の温める働きで毒消し、調和した食文化、食養生理論に合致します。
塩
- 塩は強涼です。風邪気味の時のお粥には塩味は付けません。ニガリの入った自然塩は焼いて焼塩にすると微涼に変化します。どうしても塩を入れる時は焼塩を入れます。純粋な塩NaClは焼いても強涼は変わりません。
- 塩は強潤ですので浮腫みやすい人は気を付けます。塩分を減らしたい場合は柚子、カボス、レモンなどの柑橘類で工夫します。例えば焼き魚にレモンをかけ、物足りなければ塩や醤油を少しだけ追加します。塩分だけ減らすのは難しいです。薄味にし素材の味を楽しむと結果として塩分の摂取量が減ります。
- 塩分の気になる人は、海藻、蟹は海産物ですが、燥の性質があり塩分を排泄する働きが有ります。海藻類を多くすると良いです。また冷え性の人は、温の酢で味付けを心掛けます。
酢、ハチミツ、魚介類
酢
酢は基本的に温です。温の酢、酢酸から自然酢、更に強温のリンゴ酢と温性が強くなります。リンゴ酢は酢酸の3、4倍の強さの温性だと言われます。
蜂蜜
- 蜂蜜は日本では美味しく食べるために活性炭処理やイオン交換樹脂で処理した蜂蜜も有ります。元々の色の濃い蜂蜜に比べ食べやすいですが、ミネラル、ビタミンなどが少ない傾向にあります。
- また蜂蜜を何年も寝かせると、ショ糖が還元糖に変化します。
- 蜂蜜はGI値、食品ごとの血糖値の上がりやすさが低く血糖値が上がりにくく、上がった血糖値が下がりやすいと報告されています。漢方で糖尿病にも使用する八味地黄丸には蜂蜜を入れます。
- また歯周病への予防効果があり歯石も出来にくく、大腸菌などへの殺菌力にも優れています。
蜂蜜の食性は、涼、降、散です。リンゴ酢は、温、降、散です。蜂蜜とリンゴ酢を混ぜバーモンドドリンクを作ると、平、降、散に成ります。降、散ですので、高血圧、升の方や不眠症の升、イライラの升、夜泣きの升、便秘症の升、収の人に合うようになります。
魚介類
- 貝類、蟹は涼です。貝柱は温です。背骨のある魚類は基本的に平から温です。
- 寒の冬場に涼の蟹を食べる時は、温の酢や副食で温の物を添えます。
甲羅の有る動物は身体を冷やす傾向にあります。逆に背骨のある動物は身体を温める傾向にあります。
肉類、お茶、アルコール
肉類
豚肉は涼です。火傷に効果の高い漢方の軟膏、紫雲膏には豚脂を使用します。猪肉は豚肉の原種、強力版です。
卵は平。牛肉、鶏肉、羊、ホルモンなどは温に成ります。
すき焼きで温の牛肉に温のネギ、温の玉ねぎを使うと熱性が強く、高血圧の人やのぼせ症の人には合いません。その時に涼のホウレン草のお浸しを添えるだけで熱性を弱めることが出来ます。
お茶
- 日本茶は漢方薬の五苓散と同様に胃腸間内の水分を血液中に移動させると考えられ、その結果、血液中の余った水分を利尿します。真夏に冷たい水を飲んでも飲んでも喉の渇きが取れない時に、濃い熱い日本茶を1、2杯飲むと喉の渇きが取れます。血液中の水分量が上がり脱水状態が解消するからです。そのため血液中の水分量を考えれば潤、涼となり、胃腸間内の水分量、生体全体の水分量を考えると燥となります。
- 緑茶を半発酵したウーロン茶は燥、温です。
- 緑茶を全発酵した紅茶、プアール茶は燥、温が更に強くなります。 冷え症や浮腫みが気になる人に合っています。
アルコール
- アルコールは日本酒、ウイスキー、焼酎など温、潤の働きです。ビールだけ苦みがあり涼になります。偏頭痛持ちの漢方の胃寒が原因の呉茱萸湯ゴシュユトウ証や腸寒が原因の桂枝人参湯証の人にはビールは禁忌です。
- 温、潤のアルコールに対し、つまみは涼、燥の物が合います。例えば、生の大根、昆布、セリ、茄子、トマト、蟹、キュウリ、菊花、ホウレン草などです。
- 温潤のアルコールに対し、酔い覚ましに黄連解毒湯。寒、燥、散、降の働きです。二日酔いには五苓散は涼、燥、散の働きです。五苓散は血液内に対しては潤で、生体全体としては燥となります。
食材選択の基本
東洋医学の薬理学である形象薬理学では、新鮮で寿命の長い物、エネルギーの強い物を食べると健康で長生きすると考えています。
現代栄養学のヴィタミンやミネラル、アミノ酸、カロリーなどの発想は、東洋医学には存在しません。
寿命が長く腐れにくい物
長生きしたければ、寿命の長い物を食べます。夏に収穫し冬場でも食べられるカボチャ。腐れにくい食材、短命ではなく長命の食材を食べます。
元気で居たければ、エネルギーの強い物を食べます。年老いた鶏や牛、豚、羊ではなく、若鳥、若い牛、若い豚、若い猪、ラム仔羊などです。伸びきった野菜ではなく、伸び盛りの生き生きした野菜。果物では完熟した物などです。
生きていく力は、生きた新鮮な物を食べることで得られます。採れたての野菜、獲れたての魚、刺身などです。生きた物は気があり、死んだ物には気が無いと考えられています。保存食は死体で気は無く、あくまで保存食であり主食にはなりえません。
大自然が蔵にて保存するのは、次世代へエネルギーを繋ぐ種物である穀類、イモ類です。主食になります。東洋医学の蔵は腎、水、先天の気になります。
食材の性質
緑の野菜はアクが有りますので身体をやや冷やす涼です。
根から吸収された水分は葉で蒸散されます。そのため東洋医学では葉野菜は発散作用が有ると考えています。ストレスなどの時は、葉野菜の発散作用が適応となります。
外気の陽に触れる表面、皮、葉野菜などは陰となり易いです。地の陰に触れる根菜類は陽となり易いです。
穀気。後天の気
黄色野菜のカボチャ、人参などは甘く、東洋医学の脾の臓に配当されます。寒熱は身体を冷やしも温めもしない平です。東洋医学の脾の臓は、穀気或いは後天の気と呼ばれる生きるエネルギーの臓腑です。但し人参は生ではアクが有りますので、必ず火を通して食べます。
サラダで食べる淡色野菜は、アクが少ない野菜が多いです。白菜、トマトなども黄色野菜と同じく甘く東洋医学の脾の臓に配当されます。しかしトマトはナス科ですので、皮部分には陰でやや身体を冷やすアクが残ります。生で食べる時はドレッシングやマヨネーズの温の酸味が相性が良いです。
食材の働きと作用
東洋医学では、食材を考える食養生の指標が幾つかあります。
- 五気。寒、涼、平、温、熱
- 五味。酸、苦、甘、辛、鹹
- 五色。緑、赤、黄、白、黒
- 燥湿。燥は発汗、利尿にて身体から水分を減少させます。ジュクジュクした皮膚病や痰の多い咳の気管支の水分を減少させます。湿は身体を潤わします。血液中の水分量を増やしたり、乾燥気味の皮膚を潤したりします。
- 補瀉。補は弱った身体、虚証に対し新陳代謝を活発化し元気にします。瀉は有り余るエネルギー、実証やオーバーヒートした身体の機能を鎮静化します。
- 升降。身体の状態の気血水を上げる升か、下げる降が升降です。例えば下痢は降、便秘は升。低血圧は降、高血圧は升の状態になります。脱肛や胃下垂は降です。
- 収散。無汗は収、発汗は散。皮膚病は散、便秘は収。精神神経症で躁状態は散、うつ状態は収になります。
例えば、下痢は降であり散の状態となります。高血圧で赤ら顔は、升で散で実になります。
これらの指標を組み合わせ、食材の食養生を考えていきます。指標の中で最も大事なのは、五気と五味、燥湿です。
五気、五味、燥湿
食養生の指標は、五気、五味、五色、燥湿、補瀉、升降、収散の7種がある事を書きました。その中で特に重要なのは五気、五味、燥湿です。
酸味は温で潤
五気の寒熱だけで食材を考えると矛盾だらけの食養生になることがあります。燥湿が潤の食材は、身体に水を呼びます。水は寒なり、血は熱なりですので、潤の食材は身体を冷やす傾向があります。しかし、リンゴ、杏、梅、ナツメ、スモモ等は身体を潤わす潤ですが、身体を冷やさず温める食材です。
らっきょうやニンニク等は瀉剤ですが、同様に身体を温めます。
海産物
海産物であるイカは浄血作用があります。イカ墨は解毒作用、タコも水性毒に対する解毒作用が有ります。イカは浄血作用ですので、生理量の多い人は生理中に食べると生理量が増えます。妊娠初期に食べると流産しやすくもなります。
海産物は身体を冷やすと言うのも一般論です。海産物ですが、海老や牡蠣肉、貝柱などは身体を温めます。
イカの浄血作用と、コウイカの体の中の退化した甲羅である烏賊骨が血毒に使われます。そのためイカは身体を冷やす涼と勘違いされやすいです。東洋医学の古典、本草綱目には「イカは、味は塩からく僅かに温め、毒なし」。養生要集には「イカは、味は塩辛く、性質は温める働きがあり、食して損益なし」と記述されています。丹波康頼が纏めた医心方にも同様の記載が有り、烏賊は身体を温めます。