
2020年12月26日;(写真は平戸市。ザビエル記念教会と寺院が融和する平戸独特の風景です)
歯周病と漢方
30代の頃、飲み友達が「歯茎が腫れて痛い、歯医者さんに行ってるんだけど」と言いながら一緒に飲んだことがあります。
糸練功(シレンコウ)で診ると排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)証です。次の日に漢方薬を渡し飲んでもらいました。
数日後、また一緒に飲む機会がありました。漢方薬を飲みだしたら3日位でスッキリ良くなったと言うのです。
歯周病に排膿散及湯
その後、歯周病や歯茎の化膿に排膿散及湯を使うと皆さん良くなります。
糸練功を覚え、やっと病名漢方(病名で漢方薬を決める方法)から抜け出したと思っていたのに。
歯周病は病名漢方で出来るのです。
何故か分かりませんんが排膿散及湯で良くなる人が殆どです。
それから数年して知り合いの先生から、歯槽膿漏が露蜂房(ロホウボウ)とグルコサミン製剤で良くなりましたと報告を受けました。
露蜂房で菌を殺しグルコサミンでグラついた歯茎を強めるのかもしれません。
妙に納得した記憶があります。
膵炎と漢方
私の母の家系は大酒飲みが多いです。
祖父も膵炎で亡くなりました。叔父も大酒の翌朝、急性膵炎で救急車で運ばれ緊急入院しました。膵炎は怖い病気です。
祖父は大酒を飲んだ次の日の早朝から腹痛で苦しんだそうです。お腹がカエルの様に腫れ、そして亡くなりました。急性膵炎の典型的な症状です。
急性膵炎
唐辛子などの辛い食物とアルコールの刺激で起きる事も少なくないです。
自分の膵液の消化力にて自分の膵臓が傷つけられ痛みが出ます。
漢方では急性膵炎に芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)や甘草湯(カンゾウトウ)、小建中湯(ショウケンチュウトウ)などを使用します。
慢性膵炎
更に進行してくると、膵液の分泌が衰え腹痛は逆に軽くなります。
膵液が減少するため消化能力が衰え、栄養不良となり体重が減少することもあります。
西洋医学では治る事は無いと言われる慢性膵炎。
慢性膵炎は漢方の独断場
漢方では慢性膵炎に対する幾つかの処方があります。漢方治療をすると血液検査などのアミラーゼなども正常化する方が多いです。
慢性膵炎は、漢方の独断場と言えるかもしれません。
男性・女性の漢方薬
漢方薬には男性にはよく使うが、女性にはあまり使わない漢方薬があります。
また女性によく使うが、男性には殆ど使わない漢方薬もあります。
男女で異なる漢方薬
文献上、女性にも使う可能性はあります。
しかし圧倒的に男性に使用する事の多い漢方薬で代表的な方剤は、柴胡加竜骨牡蠣湯、八味地黄丸(漢方太陽堂ではこれらの方剤は過去40年間、女性に使用した経験はありません)などです。
女性によく使う方剤では、加味逍遙散、当帰芍薬散、当帰散、女神散(女性でも出産経験のある人が多い)などです。
性ホルモン
男性は女性ホルモンも持っています。女性も男性ホルモンを持っています。男性は男性ホルモン、女性は女性ホルモンが優位なだけです。
例外の加味逍遙散
現実に加味逍遙散を男性に使うことは殆どありません。例外的に男性にも使うのは肝硬変の時です。
肝硬変になると女性ホルモンを代謝できず、男性でも体内に女性ホルモンが多くなり、乳房の女性化や手掌紅斑が出来ることが有ります。
肝硬変の初期には加味逍遙散を男性にも使用します。加味逍遙散は山梔子の入った柴胡剤ですので解毒能力に優れています。女性ホルモン等の解毒代謝を活発にし、駆瘀血作用にて肝硬変を改善するのだと思われます。
漢方はコラボレーション
伝統的漢方医学では男性に使う機会が多い、女性に使う機会が多い処方があります。
薬味の働き、成分だけを考えれば、どの方剤でも男性にも女性にも同様に使用できるはずです。
薬味の組合せで出来る処方のコラボレーションに何らかの意味が有るのかもしれません。
性ホルモンをコントロールする漢方薬
男性にも女性ホルモンがあり、女性にも男性ホルモンがあります。
性ホルモンの働き
髪の毛は女性ホルモンの支配下です。体毛は男性ホルモンの支配下にあります。
男性では、老化により女性ホルモンが減少し男性ホルモンが優位になると体毛が増え、髪の毛が減ります。
男性ホルモンが弱ったと感じた男性は、テストステロンなどの男性ホルモンの塗薬や男性ホルモン様の飲み薬を服用される方も多いと思います。
ホルモン剤を使用していると自分の身体のホルモン機能が怠けます。ホルモン剤を使いすぎると、リバウンド作用が必ず有り逆に弱くなります。
ホルモン剤に共通の現象であるリバウンドは、副腎皮質ホルモンや女性ホルモンでも起きます。
男性ホルモンを強く
漢方薬ではホルモンに直接的に働く薬味として
海馬(カイバ、タツノオトシゴ)、海竜(カイリュウ)は、男女の性ホルモンを活発にします。
蛤蚧(ゴウカイ、大ヤモリ)には男性ホルモンのテストステロンと同様の働きが有ります。
男性ホルモン強化に卵巣
男性に男性ホルモンを補う、女性に女性ホルモンを補うが一般的です。
しかし逆の方法が食養生ではあります。アカガエルの卵巣卵管の乾燥品で雪蛤(ハスモ)を使います。雪蛤は水に戻すと何倍にも大きく膨らみます。女性ホルモンのエストロゲンが含まれています。
これを男性に少量食べさせます。女性ホルモンが入ってくるため身体が反発し、ご自分の男性ホルモンが活発になると言われています。
逆も真なりですね。
乳腺炎と漢方
乳腺炎は母乳を与えているお母さまが悩まれる疾患です。乳が張ってしこりが出来たり、細菌感染で非常に強い痛みを伴うこともあります。
また乳腺炎とは別に、ホルモンの影響で高温期の女性にしこりを伴う乳腺症もあります。
乳腺症の漢方薬
漢方では太陽病位では葛根湯(カッコントウ)加石膏(セッコウ)、少陽病位では十味敗毒散加連翹(ジュウミハイドクサンカレンギョウ)などを使用します。
漢方薬は急性疾患には非常に即効性です。
しかし、乳腺炎は通常の急性疾患のように漢方薬の即効性が出難い疾患です。
原因は乳関門にあるのかもしれません。
乳関門
元々、乳関門は赤ちゃんへの母乳へ入る物質を制限し防ぐ働きがあります。
分子量の小さい薬物は乳関門を通りやすいと考えられます。
乳関門を通る漢方薬としては大黄(ダイオウ)などが知られています。
化学薬品も乳関門で制限されるため、薬物の母乳への移行はごく僅かになる場合が殆どです。
漢方薬も乳関門で制限され、患部まで届かないのだと思われます。
乳関門を通す民間療法
民間療法で乳腺症に青皮(セイヒ)が使われていました。
漢方薬に青皮を加えると、乳腺症によく効く場合が多いです。青皮の中の精油成分が働いているのだと思われます。