蕁麻疹の漢方薬

東洋医学理論

2022年6月9日。写真は、福岡市百道浜マリゾンです。

蕁麻疹に使用する香蘇散

蕁麻疹に使用する漢方薬には不思議な事があります。
海産物で食あたりしたら、まず最初に適応と考えられるのが香蘇散です。

海産物の食あたりは香蘇散

香蘇散は海産物の食あたり以外にも、胃腸の弱い方の風邪、自律神経、鬱病、蕁麻疹などにも使用される漢方薬です。

私の家族も食あたり

私の子供達が小学生の頃、近くのスーパーで買った蟹を食べ、私以外の家族全員が食あたりをして寝込んだことがあります。
その時も家族全員に香蘇散を処方し直ぐに回復した記憶があります。

香蘇散は急性の食あたりにも使用しますが、慢性の蕁麻疹にも最初の原因物質が海産物なら効果があります。

香蘇散の有効成分

香蘇散は香附子と紫蘇葉、陳皮が重要な薬味です。3味とも精油成分に薬効があります。
エキス剤は製造過程で精油成分が残らないため効果は薄くなります。

香蘇散は生薬を末にした散剤が一番精油が含まれ効果があります。
湯剤の場合でも、煎じる時間が長すぎると精油が飛び効果が薄くなると考えられます。

蕁麻疹に使用する葛根湯

他に蕁麻疹に汎用される処方に葛根湯があります。これに石膏を追加した葛根湯加石膏は蕁麻疹に広く使用されます。

葛根湯加石膏

葛根湯加石膏は、急性に限らず慢性の蕁麻疹でも使用します。
香蘇散証の原因は海産物が中心ですが、葛根湯加石膏は海産物に限らず陸生の原因物質がアレルゲンの場合にも使用されます。
症状の激しさを考慮し、石膏量は随時に増量します。

葛根湯加石膏と肝機能

20年程前、不思議な事に気付きました。

葛根湯加石膏証の蕁麻疹に、肝機能を改善する補助剤や柴胡剤を追加すると治りが早くなるのです。
肝臓での解毒が関係しているのでしょうが、香蘇散証の時にはこのような現象は見られません。
葛根湯加石膏証には、肝臓でのアミノ酸や油脂の代謝が関係しているのかもしれません。

蕁麻疹の橘皮大黄芒硝湯

急性や慢性の蕁麻疹に汎用される処方に橘皮大黄芒硝湯があります。金匱要略が出典の処方です。橘皮と大黄、芒硝の3味からなる処方です。

橘皮大黄芒硝湯

大黄、芒硝が入りますので裏熱です。また表証に蕁麻疹があります。
裏の症状と表の症状が混在していますので、少陽病の実証になります。
しかし大黄芒硝による瀉下と清熱の処方ですので、方意としては陽明病に近いです。
少陽陽明の合病だと思います。

使用する芒硝

芒硝は永く硫酸ナトリウムと勘違いされていました。
その後、正倉院の収蔵漢薬である芒硝が硫酸マグネシウムと言うことが分かりました。
現在は、芒硝は硫酸マグネシウム、朴消は硫酸ナトリウムだと言われます。

食養生と橘皮

食養生では、海辺に海産物の毒消しをする柑橘系が育つと考えています。
また内陸部では肉の毒消しをするリンゴが育ちます。食養生の身土不二です。

現在の橘皮は橘ではなく、ミカンの皮を乾燥したのが生薬として使われます。
青い未完熟の皮を乾燥し青皮になります。
完熟した黄色の皮を1年程乾燥させたのが橘皮です。
更に1年以上乾燥させ精油成分をマイルドにしたのが陳皮になります。