陰陽と磁石

東洋医学概念

2024年4月12日。写真は、福岡県朝倉市甘木公園の桜です。

前回の六部定位脈診と小宇宙では円筒磁石を使った東洋医学の診断について書きました。

経気は磁場を持っています。それにより臓腑判定ができます。
円筒磁石の磁力線がN極からS極へ向いている事を使います。経絡や身体の経気の流れの向きを調べる方法です。

紙包磁石

円筒磁石と別に、入江正先生に教わったのに紙包磁石があります。
紙包磁石の片面をN極、逆面をS極にします。

陰陽と補瀉

磁石にはもう一つの働きがあります。N極は補法、S極は瀉法の働きがあります。
これは東洋医学の陰陽二元論の働きそのものです。

地球の地磁気

磁石のN極は北を指します。北極はS極だからです。反対に南極はN極になります。
磁力線はN極からS極へ向かいます。地球の地磁気は南極から北極へ向かって磁力線が向いています。

陰陽を寒熱、補瀉、升降、収散で観ると

  • 陰は冷やす、瀉す、降ろす、発散発汗になります。
  • 陽は温める、補う、升らせる、収めるになります。

陰は瀉、陽は補です。
陰陽二元論では北は陰、南は陽になります。
北は陰で瀉、南は陽で補です。

北のS極は陰で瀉。南のN極は陽で補です。陰陽二元論の理論通りです。

升降と収散

升は、血糖値を上げる、血圧を上げる、内臓筋を鍛え内臓下垂を防ぐ、脱肛を上げる、下痢を止める、方向性と考えれば分かりやすいです。
降は、血糖値を下げる、血圧を下げる、内臓筋が弱り内臓下垂する、脱肛する、下痢をする、方向性と考えます。

収は、止汗する、皮膚を締める、脱肛を収める、下痢を収める働きと考えます。
散は、発汗する、皮膚を開きます、脱肛する、下痢をする働きと考えれば良いです。

磁石の補瀉

再度確認です。
地磁気と陰陽二元論を纏めると
磁石のN極が指す北極はS極です。北極のS極は陰です。北は陰で寒涼、瀉です。
南極はN極です。南極のN極は陽です。南は陽で熱温、補です。

ゆえに紙包磁石のS極を当てると瀉法になり、N極を当てると補法になります。

陰陽二元論の色

ここで疑問が生じます。
陰陽二元論では色も決まっています。赤色は陽で黒色は陰です。

北はS極で陰、陰は黒色です。
南はN極で陽、陽は赤色です。

本来は磁石のS極に黒色、磁石のN極に赤色を持ってくるべきです。
その方が更に磁石の陰陽、補瀉の力が強くなると思われます。

しかし入江先生はS極に赤色、N極に黒色を付ける様に指導されました。
漢方薬や化学薬品も直接に肌に触れると別の反応が出るので、薬と肌の間に紙を挟むように指導されていました。
磁石の力が強いので、色でオブラートの様に包まれたのかもしれません。
今となっては定かでありませんが。

紙包磁石の使い方

紙包磁石には二つの使い方があります。

  1. 補瀉の治療方針を決められる事。
  2. 治療シュミュレーションが出来る事です。

経別脈診部で補瀉決定

経別脈診部で治療臓腑を決定します。
その臓腑の補瀉を決めるのに便利なのが紙包磁石です。

指による補瀉

人間の指は爪の生え際ではなく、十宣穴から掌側と甲側で極性が逆転しています。
掌側の肺経、心包経、心経が通る親指、中指、小指、労宮は陰面で、陽を感じる力が強いです。
逆に甲側の大腸経、三焦経が通る示指、薬指は陽面で、陰を感じる力が強くなります。

手掌側と手背側では逆の極性になります。

補瀉に対する紙包磁石のS極、N極

指による陰陽が決まりましたら、紙包磁石でダブルチェックします。

陽病なら紙包磁石のS極を当てると瀉法になります。もしこの治療法が正しければ同じ合数の両手の手掌、患部、反応穴、治療臓腑、百会、任脉、督脉の反応が全て消失します。
陰病ならN極を当て補法をすると、全ての反応が消失します。

全ての反応が消失することを確認できると臓腑の補瀉が決まります。

患部の補瀉決定

同様に患部やツボでも指のセンサーや労宮、裏労宮を使い補瀉の決定をします。
その後に紙包磁石でダブルチェックします。

労宮、裏労宮をセンサーとして使う時の注意点は、患者の経気と術者の経気を直角にします。

また紙包磁石の大きさよりも患部の範囲が広い場合が有ります。紙包磁石を患部に貼るのではなく少し距離を置くと補瀉が出来ます。

経別脈診部と同様に補瀉が正しければ、すべての反応が消失します。

補瀉を間違えると

漢方治療や鍼灸で、処方や取穴を間違えても大きな副作用が出る事は少ないです。東洋医学の素晴らしい面かもしれません。
ただ補瀉を間違えると大きな反応が出ることが考えられます。
人間の身体は補に鈍感、瀉に敏感です。

治療する側、術者は補瀉だけは間違わない様にしないといけません。

治療シュミュレーション

紙包磁石の素晴らしい点は治療シュミュレーションが出来ると言うことです。
シュミュレーションは補瀉の決定をしてから行います。

座骨神経痛

例えば座骨神経痛で右側の足が痛いとします。もし第四腰椎に問題がある座骨神経痛なら紙包磁石を問題のある腰椎に貼り、右足の反応が消失すれば、第四腰椎の治療にて座骨神経痛が解消することが分かります。

手の痺れ

手や肩が痺れて痛みがあるとします。
頚椎が原因の場合は、頚椎に紙包磁石を貼る事により治療点が決まります。
頚椎に反応が無く、五志の憂の知覚神経障害の場合は五志の反応穴に紙包磁石を貼り患部や臓腑等の反応が消えれば、五志の治療で手や肩の治療が出来ます。
胸郭出口症候群は胸膈出口に紙包磁石を貼ります。そして反応が消えるのを確認します。

お灸をする

蒙色の治療では反応が強い箇所にお灸をします。
お灸後に、最初の蒙色が消失し次の蒙色が現れます。
新しく現れた蒙色にお灸をします。2つ目の蒙色が消失すると次の蒙色が現れます。
次もお灸にて蒙色を消していきます。これを繰り返す事で治療をしていきます。

紙包磁石を貼るシュミュレーションにより、何か所かの治療は必要ないかもしれません。1、2か所の治療点で済む可能性があります。

同様に鍼でも入江正先生は紙包磁石でシュミュレーションを行い鍼を打つ経穴を決めていらっしゃいました。

術者の発想

病になった時、人間の患部や臓腑に異常な電磁場が生じます。経絡の磁場も変化します。その磁場を正常な太極に戻すのが、漢方薬であり鍼やお灸です。
紙包磁石にも磁場があります。補瀉決定やシュミュレーション以外にも紙包磁石は治療法としても使えます。

紙包磁石は治療する側の発想で無限に使い方が広がります。