病因と気血水

東洋医学理論

2024年4月23日。写真は、熊本市熊本城です。奥が加藤清正が作り、手前が細川忠利が作った二様の石垣です。

気毒、血毒、水毒は漢方で病因と言われる概念です。
中医学では水毒を痰とし、更に鬱、欝滞という概念も加わります。

気血水と食養生

東洋医学の入薬の理論に基づきます。


  1. 辛み、葉野菜、皮等は散の働きが有ります。上気、気滞、水滞に働く傾向があります。
  2. アクや苦みの無い根菜類
    補剤として気虚に働く傾向があります。漢方薬では人参や黄耆などです。
  3. 苦み、アクのある食材や薬剤
    血毒の清熱に働きます。茄子や牛蒡など。漢方薬では黄連や黄芩などです。
  4. 油こい物
    油を含む食材や漢方薬は血毒に働きます。漢方薬では柴胡、牡丹皮、桃仁などです。
    油こくない物は、気毒、水毒に働く傾向があります。
  5. 日光、紫外線の強い所で生育する物
    血毒に働きます。
    日光の弱い所で育つ物は、水毒に働く傾向が有ります。キノコなどの菌糸体などです。

気は陽。水と血は陰と言われます。
水と血は目に見えます。気は目に見えないエネルギーです。気によって水と血は動かされています。

気毒の症状

気毒の症状は三つに分類されます。

上気

気が上焦へ衝きあがる型です。
顔が赤くなったり、逆上せたりします。
主要薬味は、桂枝や柿蒂などです。
主要薬方は、桂枝加桂湯、苓桂朮甘湯、五苓散、桂枝加竜骨牡蠣湯などです。

気滞

身体の中や喉などに気が欝滞する型です。
便秘や腫瘍なども気滞と捉えることもあります。
主要薬味は、枳実。枳殻、厚朴、香附子、蘇葉などです。
主要薬方は、半夏厚朴湯、小承気湯などです。

気虚

気の不足です。
微熱が続いたり、元気が無かったり、食後に眠くなったりします。
主要薬味は、白人参、黄耆などです。
主要薬方は、補中益気湯、四君子湯、六君子湯などです。

一般に瘀血と言われていますが、血毒には様々な病態があります。瘀血はその一部にしかすぎません。
また陽証の血熱に対応する薬味は油性成分が多い傾向にあります。

血毒の症状

便秘、張りのある実の腹満、口唇の青黒さ、口渇、紫斑、サメ肌、月経異常などの症状が現れます。
成因は、体質的傾向、月経異常、打撲、門脈圧上昇、ホルモン異常、自律神経の影響、感染症、膠原病、野菜不足など多岐にわたります。
血毒の症状は四つに分類され、それぞれが複合して現れる場合もあります。

表陽証

主要な薬味は、紅花、蘇木、桂枝などです。見た目にも赤味のある生薬が多いです。
主要な薬方は、葛根湯加紅花などです。

裏陽証

裏の血毒には上焦、中焦、下焦が有ります。

上焦

上焦の血熱に黄芩を使用します。鼻詰まりに使用する葛根湯加味方の構成薬味です。

中焦

中焦の上の血熱に、丹参、黄連など。心筋梗塞や脳血流にも使用されます
中焦の中の血熱に、柴胡など。
中焦の下の血熱に、通導散の薬味であり表陽証で出てきた蘇木なども入る可能性があります。

下焦

下焦の血熱には黄柏などです。知柏八味丸、七物降下湯などに使用されます。
下焦は腸と瘀血に分かれます。
腸は大黄、芒硝などの薬味で、薬方は大黄牡丹皮などです。
瘀血は桃仁、牡丹皮などの薬味で、薬方は桃核承気湯などです。

瘀血

臍周囲の圧痛や少腹急結は瘀血の腹証です。
処方の流れは、強実証の桃核承気湯、実証の桂枝茯苓丸、虚証の温経湯です。女性の卵巣機能とも関係があります。

桂枝茯苓丸に上焦の黄芩や表証の紅花を加味すると上焦や表証に効きます。
また脳梗塞や全身の血栓症、リンパの欝滞に多用します。不思議な事に桂枝茯苓丸に黄芩を加味すると胆の腑に配当が変わります。

陳旧の瘀血、陽証

主要な薬味は、水蛭、虻虫、裴蟲、蠐螬、乾漆などです。虫の生薬が多いです。虫は油性が多いです。
主要な薬方は、抵當丸などです。

裏陰証

一般に血虚と言われることもあります。

主要な薬味は、当帰、川芎、芍薬、地黄、敗醤などです。四物湯の構成薬味が多いです。
主要な薬方は、四物湯、当帰芍薬散、温経湯などです。

四物湯の構成は絶妙

四物湯は腎の臓に配当されます。
当帰は肝、白芍薬は脾、熟地黄が腎です。

肝の当帰を補うのが、相剋の先の脾の白芍薬です。
脾の白芍薬を補うのが、相剋の先の腎の熟地黄です。
四物湯は各生薬ごとの巧みな配当になっています。

次回は病因と水毒に続きます。