2023年3月14日。写真は、青森県、奥入瀬谿谷です。病が進行する太陽病から続く
少陽病
太陽病、悪寒発熱の次の病位は少陽病です。少陽病は病邪が裏、内臓に入りだします。東洋医学では、身体を3つに分け病の状態を診ていきます。上焦、鳩尾から上。中焦、鳩尾から臍。下焦、臍より下の三焦です。臓腑の三焦とは異なります。
陽病は上から下へ進行していきます
太陽病は上焦の病が多く、少陽病は中焦の病、陽明病は下焦の病へと移っていきます。また表裏の概念では、表は上焦の病に属し、裏は下焦の病に属します。
一般に太陽病は表、少陽病は半表半裏、陽明病は裏と言われます。しかし漢方の古典である傷寒論には半表半裏と言う概念や記述はありません。表と裏だけです。太陽病は表証、陽明病は裏証、表証も裏証も症状があるのが少陽病と規定されています。半表半裏は後世に創られた概念です。
少陽病の腹証
腹証としては胸脇苦満が特徴になります。胸脇苦満とは乳首の真下付近で第12肋骨、1番下の肋骨の下側から上に内側に向かい手の指先でえぐる様に圧迫します。その時に苦しければ自覚的胸脇苦満です。右側と左側で指の入り方が異なる時は、入りにくい方に他覚的胸脇苦満が有ります。
少陽病の熱型は往来寒熱
往来は行き来するの意味です。寒と熱が行き来するのが往来寒熱です。風邪を引いて3から4日目に良く現れる熱型です。朝方は平熱で夕方に微熱が出て、その後、発汗し翌日の朝は平熱となりますが、夕方になるとまた微熱が出るを繰り返します。これが典型的な往来寒熱になります。
より病邪の強い実証だと微熱ではなく高熱が出ます。そして高熱の前に悪寒がし太陽病の悪寒発熱の病態を夕方に呈します。往来寒熱ですので、基本的には柴胡剤の適応です。しかし高熱の往来寒熱時は悪寒の時に太陽病の麻黄剤を頓服します。
逆に虚証だと本人は熱に気付かない程度の微熱になります。発汗も寝汗、盗汗に変化します。風邪を引いて1ヶ月も微熱と寝汗が続くのも往来寒熱の一つのパターンです。
往来寒熱の漢方薬
往来寒熱の時期は柴胡剤の適用に成ります。実証では小柴胡湯以上、虚証だと太陰病位に近づき補中益気湯証が多くなります。微熱と寝汗を繰り返している場合は、補中益気湯以外に清暑益気湯、出典で処方内容が異なりますが人参養栄湯、当帰六黄湯などが適応する場合も有ります。
少陽病。虚すれば太陰病、実すれば陽明病です。
少陽病の食養生
往来寒熱の時には、油物が欲しくなく食べたくありません。食養生では高蛋白質、高カロリー、低脂肪が基本と成ります。脂肪の少ないタンパク質、鶏肉や白身の魚、貝類、海老類、豆腐、卵など。イモ類、穀類他が高カロリー、低脂肪です。また発汗にて排泄されるカリウムを補給するため温野菜なども必要となります。
少陽病の臓器
少陽病は病邪が内臓の上部に入った状態。中焦、鳩尾から臍の病です。陽証ですので、その部分に熱又は炎症が有ります。西洋医学的な臓器としては肺の深い部分、肝臓、胆嚢、胃、十二指腸、膵臓、脾臓、横隔膜などです。
少陽病の舌診、脈診
臍から上の内臓に熱が籠りますので、舌には白苔が生じます。熱が強いと黄苔から褐色の苔へ変化していきます。また内臓熱が有るため舌や舌苔は乾燥気味です。口中の粘りや、食べ物や口が苦く感じたりするのも少陽病の特徴です。脈証は弦脈を呈する場合が多いです。
陽明病
少陽病。虚すれば太陰病、実すれば陽明病ですので、陽明病は全て実証になります。
陽明病の熱型は潮熱
陽明病の熱の型は潮熱と言われる熱型です。西洋医学では弛脹熱と言われることもあります。
潮熱は寒気や悪寒が無いのに頭から足先まで全身くまなくかく汗です。海岸に潮が満ちてくる時に岩場の隅々まで潮が満ちる様に、身体の隅々までかく汗のため潮熱と言われています。
頭からだけ汗をかいたり、脇下だけ汗をかくのは潮熱ではありません。また寒気が伴う場合も潮熱ではありません。また日晡、夕方4時前後頃に高熱がでる日晡潮熱も傷寒論の潮熱ではありません。
その他の熱型
似た熱型が有ります。
- 身熱は、潮熱と同じく寒気が無く全身に汗をかきますが、妬けるような熱感を伴います。
- 悪熱は、悪寒はなく熱に耐えられず苦しむ様を表しています。陽明病の熱型です。
- 瘀熱は、裏、身体の内部に熱が籠り、瘀は籠り滞るの意味です。尿の減少を伴う熱型です。代表的な証は茵蔯蒿湯証です。古方派は瘀熱と言い、後世派は湿熱と呼びます。