2020年10月17日
唐辛子の食養生
唐辛子を食べると発汗します。それ故に唐辛子は発汗し身体を冷やすため寒と間違われる場合が有ります。
温かい地域で唐辛子を食べると身体を温めるため、発汗します。発汗するため身体の熱が奪われます。逆に非常に寒い地域で唐辛子を食べると身体を温めますが、寒いため発汗まではしません。身体を温めるだけです。
風邪に使用する葛根湯
風邪に使用する葛根湯や麻黄湯は温剤です。身体を温め、発汗し熱を下げます。葛根湯や麻黄湯は温かい地域でも寒い地域でも温剤である事に変わりはありません。
同様に唐辛子は熱剤です、身体を温めます。気温などの環境で身体の反応が異なるだけです。食材や漢方薬の性質は変わりません。ただ環境の生体外環境、生体内環境にて働きが異なってきます。
生体内環境と生体外環境
気温や湿度などは生体外環境です。体質や病状は生体内環境です。漢方薬や食養生は、個々の生体内環境に合わせます。一人一人の体質や病状に応じ治療法が異なってくる東洋医学独特の理論が構成されていきます。そして生体外環境にて漢方薬や食を増減できれば最高です。
また気温や湿度等の生体外環境は、身体の生体内環境に影響を及ぼします。季節や気温、湿度の変化に合わし治療法を少しづつ変え、1日の中でも服用時間を変えるところに東洋医学の冥利が有ります。
梅の食養生
春に咲く梅、まだ寒いのに私達に春を教えてくれる梅の花。初夏には太宰府天満宮での梅ちぎりが催されます。少し熟し赤味のある梅の実は梅干しに、青い梅の実は梅酒に漬けられます。
漬けられた梅酒は夏に飲まれます。梅は身体を冷やすから夏の火照った身体に梅が良いと間違われることが有ります。
酸は温
梅の五味は酸です。酸っぱい物は温の働きが有り、身体を温めます。冷たい物を摂り過ぎた夏の胃腸を温め整える働きが有ります。
酸は潤
また酸は潤の働きが有ります。身体を潤す働きです。暑い夏、多量の発汗は脱水症や熱中症の原因になります。梅は身体の保水能力を高めます。夏の身体に梅が合うのは、梅が身体を潤すからです。
ミカンの食養生
「寝る前にミカンを食べては駄目、ミカンは身体を冷やすから」と言われたことは無いでしょうか。
ミカンの五味は酸です。前回の梅と同じです。酸っぱい物は身体を温めます。では何故、寝る前のミカンは良くないのでしょう。ミカンは潤で身体に水分を保留します。就寝中は排尿に行きません。ミカンの潤の働きで身体に水分が溜まります。朝まで排尿しなければ無駄な水分が身体に溜まり浮腫みが生じます。
果物は殆どが潤の働きがあります。身体を潤わします。浮腫みやすい人は浮腫みが生じます。果物を朝方に食べると、日中の排尿にて身体への害は少ないです。また身体に水分を保留しますので脱水、熱中症、梗塞なども起こしにくくなります。
ウリ科は燥
果物の中で、柿やウリ科のスイカ、メロン、ゴーヤなどは燥の働きが有ります。ウリ科は利尿作用があります。柿はアク苦みで燥になります。身体の余分な水分を排泄する働きです。乾燥性の咳や乾燥性の皮膚病等の時は、柿やウリ科は控えるようにします。
柿やスイカ、メロン等が水分を保留しないので、夜に食べても良いかとなると疑問です。糖をエネルギー変換して代謝するインシュリンは、朝方の分泌量が多いです。夜になるに従いインシュリンは減少していきます。果物の中の糖分がエネルギーとして使われない為、脂肪に変換され余分な脂肪が身体に付き肥りやすくなります。
牛蒡の食養生
「ゴボウは根菜類だから、身体を温める」と言われることがあります。一般的に「根菜類は身体を温め、葉野菜は身体を冷やす」と言われ、漢方の教科書にも書かれています。
漢方薬の黄連や黄芩は根物です。非常に身体を冷やす働きが強い生薬です。漢方薬の中には根物なのに身体を冷やす生薬が数多くあります。大黄、丹参、竹節人参、知母、苦参、牡丹皮、他。共通している味は苦みとアクが有ると言うことです。
ゴボウは非常に強いアクが有ります。そのためゴボウは根物なのに身体を冷やします。きんぴらゴボウに身体を温める唐辛子を入れる理由が有ります。
一般論の食養生
通常、言われる「根菜類は身体を温め、野菜は身体を冷やす」は一般論です。「生野菜は身体を冷やし、煮たり炒めた温野菜は身体を温める」も一般論です。漢方薬は40、50分煎じて抽出します。長時間ボイルしても身体を冷やす涼、寒の漢方薬。例として黄連解毒湯、白虎湯、他は、やっぱり身体を冷やします。生野菜でも身体を温める食材も有ります。決めつけずに、例外を認めることが大事かもしれません。