2023年8月25日。写真は福岡市百道中央公園のドングリです。
井戸掘り
20年以上前のことです。ラジオでオーストラリアの女子高校生が募金を300万円集め、アフリカに井戸を掘ったと聞きました。私は恥ずかしながら、その時にアフリカの水不足を知りました。
水の不足しているアフリカの村では、脱水に弱いお年寄りや赤ちゃんから犠牲になります。病気で亡くなるのではありません。水が無いだけなのです。
自分でも井戸が掘れると考えました。自分の子供たちが巣立ち、生活を変えるとできます。一度しかない人生、もう1回出来るかもと思いました。資金を出すだけでなく自分で井戸を掘りたいと思いました。水の無い村で井戸から水が出た瞬間、村の子供たちの喜ぶ顔が浮かびました。子供たちの喜ぶ顔が見たい私の我が儘だったのかもしれません。
その後、ロンドンで開催されたマラソンにマサイ族6人が盾と槍を持ち民族衣装で、井戸を掘る資金を得るため完走しました。私も井戸を掘る場所が決まりました。
母が病に倒れる
母が病に倒れ、様々な問題が生じ出来なくなりました。60歳を超え私の井戸掘りは夢と終わりました。今も後悔しています。人を傷つけたり、人に迷惑を掛けなければ、何を言われても構いません。後悔しないよう生きて下さい。一度しかない貴方の人生です。
無駄な物は無い
東洋医学では、人間の体に無駄な物は無いと考えています。扁桃肥大で扁桃腺を切り取る、虫垂炎で盲腸を切り取る、胆石で胆嚢を切り取る発想が東洋医学にはありません。最後の最後まで湯液、鍼灸、導引により対応していきます。
切除は出来るだけ減らすべきと思いますが、切除する事を否定してはいけません。それが東洋医学の良い所であり、また限界でもあるからです。東西両医学を適切に用い助かる患者さんが多くいらっしゃいます。東西両医学のお互いの長所、短所を選択すべきです。
自然界に無駄な物は無い
人にも無駄な人はいません。自然界では異なった植物のタンポポとハコベが同一には成れません。タンポポがありハコベがあり各々が小宇宙を作っています。
一人一人性格が異なり、人生が異なります。親子でも夫婦でも一心同体ではなく、離れすぎない近すぎない距離が小宇宙どうしの間にはあります。一人一人の長所を活かし輝く人々の人生が集まり、更に大きな小宇宙が形成できたら良いです。
「東洋医学の小宇宙は、無駄な物は無い、無駄な人は居ない。いかに調和し太極になり、和するか」です。
天人合一
目に見える人間や植物だけではありません。目に見えない一生や経験にも無駄なものは有りません。成功だけでなく失敗も、楽しいことだけでなく悲しみも、目に見えない経験で今の貴方と言う小宇宙が出来ています。
自然界に無駄な物も動物も植物もありません。岩があり、岩の下が苔むし、そこで生きる虫がいます。山があり、水を貯え泉が湧きます。川が出来、水の恩恵を受ける生物を生かしています。
私達は周りに生かされています。同時に周りを生かしてもいます。周りを生かせば生かすほど、色んな経験も出来、世界も広がり、周りも自分も豊かになるのかもしれません。まさに東洋医学の天人合一の思想です。
素問の素
私が50歳になった頃です。大坂在住の知り合いの先生が、今までのご自分の生き方や生活を捨て古方派漢方一筋に変えられました。私はその男気に感銘したことがあります。悔しいですが、数年後に先生は亡くなられました。
私はその先生が勉強しやすいよう専門家向けのThe古方と言う本を書きました。A4で200ページ以上になりました。急いでその先生に届けたく3ヵ月間、1日の殆どの時間を使い書き続けました。
桑と素
そしてThe古方の表紙には桑の実のイラストを持ってきました。
喫茶養生記を書かれた栄西禅師は桑を使った治療法を数多く残されています。
古典である素問は、私達東洋医学を志す人間の原点です。素問の素はカイコが桑の葉を食べ糸を引いてる姿です。まだ何にも染まっていない、真っ白な純白の絹の絲。素人、素肌、素顔、素焼き、他。
純白では現実の世界は生きれない、医療も東洋医学も敵である病邪を純粋と考えると邪気と戦えない。医術、臨床の技が必要になります。でも、その技を使う心に純白が必要だと思います。だから素問は東洋医学の心、基礎医学なのかもしれません。