2023年1月24日。写真は、福岡市夕焼け です。
柴胡には野生品と栽培品があります
柴胡は本来の漢方では野生の4年根を使用します。しかし野生の柴胡は取りつくされ、日本では絶滅したと言われる生薬です。現在は栽培品の柴胡が漢方薬として使用されています。
現在の日本では、柴胡の同定はサイコサポニンでされます。サイコサポニンが多ければ柴胡として合格します。栽培品の未熟な1年根の柴胡にはサイコサポニンが多く検出されます。しかし理想的な野生の4年根の柴胡にはサイコサポニンは少ないと言われています。
私が若かった頃、野生の4年根の柴胡は煎じると薄っすらと油が浮いていました。柴胡は血剤です。食品中の油脂は血毒の原因になります。その血毒の治療薬である血剤の漢方薬には油を含んだものが多いです。油脂が原因の血毒は、油の血剤で治すのかもしれません。形象薬理学です。
柴胡が生える環境
柴胡は乾燥した水捌けの良い、日当たりの良い南側の斜面に自生します。私が20年程講師を務めた鹿児島の薬草園では小山の頂上に柴胡を栽培していました。頂上で鹿児島の火山灰のため水捌けが良く日当たりも良かったです。そこでは7、8年根が普通に育っていました。
日本の野生の柴胡はミシマ柴胡です。私が小さい頃、鹿児島では柴胡セコ取りと言って小学生のアルバイトでした。太平洋戦争の爆弾が落ちた後の窪みの北側の斜面、日当たりの良い所にセコは咲いていました。鹿児島や宮崎、静岡など最高品質の柴胡が取れていました。黒潮が流れる温かい水捌けの良い土地です。
柴胡は根が薬用です。柴胡の採取は根こそぎです。そのため現在の日本では絶滅しそうになっています。
柴胡の思い出
柴胡は安定供給のため栽培品が造られるようになりました。柴胡は1年を過ぎた頃、線虫に下の方の茎をクールッと一周食べられ枯れてしまいます。野生品のような4年根は育ちません。栽培品には肌色に近い若すぎる1年根もあります。太陽堂漢薬局では出来るだけ褐色で油気の多い柴胡を選別します。
40年程前に、日本と正反対の地球の裏側、北緯と南緯は違いますが赤道からの距離もほぼ同じであるブラジルで柴胡の栽培がされたと聞きました。非常に生育もよく良い柴胡が出来たそうです。煎じてみると赤い煎じ薬ができたそうです。柴胡の栽培地が赤土だったのが原因だったと聞いています。
漢方を生業とする人間にとって野生の柴胡は憧れの生薬です。温かく、水捌けが良く、日当たりが良いことが条件です。また春に野焼きをする地区では害虫を防ぐことも出来ます。
私の出身地である鹿児島では自衛隊の演習地の栗野岳で柴胡を見たことがあります。ここは野焼きを行います。火山灰の水捌けの良い南側の斜面に柴胡が自生していました。
私は鹿児島から福岡へ移住しました。福岡では石灰岩の水捌けの良い山があります。平尾台です。毎年野焼きもされています。福岡へ来た翌年に、柴胡が黄色な小さい花を咲かす9月に平尾台へ行ってみました。ビックリしました。そこら中が柴胡だらけなのです。あの絶滅したと言われる柴胡が一面に咲いていました。感動でした。平尾台には柴胡以外にも様々な薬用植物が咲いています。自然がそのまま残る数少ない場所です。