虚実と表裏とは

漢方コラム

2024年5月21日。写真は、大阪市天王寺区、聖徳太子 が作られた四天王寺の金堂です。

虚実の成り立ち

一般に痩せている人は虚証、ガッチリ型は実証と言われます。
東洋医学の虚実は、虚証は正気の虚の状態であり、実証は病邪の実の状態です。
体格の良い人は実証ではなく、実証になり易い人であり、実証ではありません。

正気の質と虚実

正気の質が弱い人は病気になると抵抗力が弱く、正気の虚証となります。
正気の質が強い人は、病気になると抵抗力が強く、それ故に病邪の反応も強く、病邪の実証を呈します。

正気の質が弱い人は虚証、正気の質が強い人は実証です。

正気の量と陰陽

正気の量が多い人は病気になると、陽証を呈します。
正気の量が少ない人は陰証を呈します。また病の罹患期間が長いと正気の量が減少していき陰証を呈することが多くなります。

正気の量が多いと陽証、正気の量が少ないと陰証になり易いです。

虚実と体力、体質との関係

正気の虚は、体力が質的に充実していない人に現れやすいです。
病邪の実は、体力が質的に充実している人に現れやすいです。

虚証になり易い人は

  • 痩せている、筋肉の弱い人水肥り
  • 顔の色つや悪く、疲労しやすい。
  • 小声が多い。
  • 上腹角が狭い
  • 風邪を引きやすい。
  • 発汗しやすい。
  • 下痢気味である。

実証になり易い人は

  • 体格が良く、筋肉の発達した人。
  • 顔の色つやが良く、行動的な人。
  • 声が大きい
  • 上腹角が広い
  • 風邪を引きにくい。
  • 無汗
  • 便秘気味である。

その他に私が若い頃は、髪の毛の太さや目の大きさ、顎の張りなど細かく指導されていました。

表裏と虚実の関係

表証には虚証と実証が有ります。

  • 表証で内臓まで邪気が入っていないので、舌証は無い場合が多いです。
  • 脈証は表証ですので浮の脈を呈します。
    表虚証は浮で弱い脈、表実証は浮で力のある脈を呈します。
  • 主な症状は表証ですので体表の症状が中心です。筋肉や関節の症状です。頭痛や肩凝りがあります。
    また寒気は実証は悪寒、虚証は悪風です。
    発汗は実証は無汗、虚証は発汗します。
  • 対応する処方は表虚証は太陽病虚証ですので桂枝湯関係、表実証は太陽病実証ですので麻黄湯や葛根湯関係です。

裏証にも虚証と実証があります。

  • 裏証は身体の深部まで邪気が侵入しています。舌証にも変化が生じます。
    舌の燥湿は虚証は湿、実証は燥です。
    また苔色は裏虚証は微白苔から無苔の場合が多いです。裏実証は乾燥した白苔、黄苔、黒苔へと裏熱の強さにより変化していきます。
  • 主な症状は裏虚証は食欲不振、下痢、腹部軟弱が多く虚した腹満を呈します。
    裏実証は口渇を呈し水分を欲しがります。また便秘がちで実した腹満を呈します。
  • 対応する処方は裏虚証は陰病の場合が多いです。
    真武湯、人参湯、四逆湯などが代表処方です。
    臨床上は、少陽病の虚証も太陰病と重なっている場合が多く見られます。
  • 裏実証は陽病ですので、少陽病の実証から陽明病の実証です。
    大柴胡湯や柴胡加竜骨牡蠣湯、承気湯類、石膏剤の白虎湯などです。

表裏の治療原則

東洋医学の治療は先表後裏が原則です。
先に表を治療し、その後に裏を治療していきます。標治部から本治部へ治療をしていくのも同じです。

糸練功では合数の低い方から高い方へ治療をしていきます。

先急後緩

但し例外があります。先急後緩です。
傷寒論陽明病篇では、陽明病の便秘が酷い場合はこれを下すとあります。便秘を例に挙げていますが、実際には下痢や高熱などでも先に治療をしていきます。
また急性の症状から慢性の症状へ治療をしていくのも先急後緩の一つです。

糸練功では先急は必ず合数が低く出ます。
先表後裏と同じく、合数の低い方から高い方へ治療をすれば間違うことはありません。

証の判定

証の判定が東洋医学の診断になります。
人間の身体は補に鈍感、瀉に敏感です。

質の高い原料で作られた漢方薬と言う前提ですが。
陰陽を間違わなければ大きな副作用は漢方ではありません。せめて虚実を間違えない事です。