写真は、鹿児島県霧島市の桜並木です。私の母が生前「父のおじさんが植えた桜並木だよ」と言ってたのを思い出します。
古方派の病位
日本の伝統的な漢方である古方派は病気の進行を三陰三陽で分類します。これは漢方の古典である傷寒論、金匱要略に基づいた実戦的な病位です。太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病、死に至ると考えます。
一方、東洋医学の解剖学である黄帝内経系では太陽病、陽明病、少陽病、太陰病、少陰病、厥陰病になります。どちらも間違いではありませんが、古方派は実戦的な病位を取ります。
三陰三陽
古方派は、全ての病は三陰三陽で進行すると考えています。しかし、すべての病が同じスピードで進行しているわけではありません。
例えば副鼻腔炎は上焦の病です。病位は上焦或いは表証の太陽病の時期が非常に長くなります。この時に使われる処方が葛根湯加川芎辛夷や葛根湯加味方などです。太陽病位が長い副鼻腔炎も少陽病へ移行していきます。四逆散加辛夷などです。
もう1つの例です。肝炎などは中焦の病です。急性肝炎の時は太陽病、或いは太陽陽明の合病になります。しかし慢性期では中焦の少陽病の時期が非常に長いです。進行し肝硬変になり腹水が溜まりだすと太陰病位に移行します。
副鼻腔炎は上焦表証の太陽病位が長く、肝炎は中焦の少陽病位が長い事が多いです。上中下焦の三焦の侵された臓器により病位の長さが異なります。
慢性病の病位
太陽病は表寒であり、陽明病は潮熱で実証です。少陰病は表裏寒で心臓の衰えが特徴です。人間が生きて行くのにこれらの病位は非常に厳しい生体内環境です。
人間は通常、過ごしやすい少陽病位と太陰病位で生きていると考えられます。一般的に実証の人は少陽病位、虚証の人は太陰病位です。そのため慢性病で漢方薬を服用される方も少陽病位と太陰病位が非常に多くなります。
舌診
陰病と陽病では舌の湿潤が異なります。舌は内臓の状態を現しています。陰病は湿っており陽病は乾燥気味です。また舌の苔も内臓熱に左右されます。内臓が冷え内臓熱が無ければ無苔となります。内臓熱が強くなれば白苔、黄苔、褐色苔、黒苔と変化していきます。
太陽病の舌診
太陽病位では内臓まで犯されていないため原則無苔です。しかし慢性的に内臓に熱が有る人は太陽病位の風邪でも白苔或いは黄苔があります。内臓に熱が有る人は太陽陽明の合病になり易く太陽病でも石膏が必要になる事があります。また温病にもなり易い傾向があります。
少陽病の舌診
少陽病は陽病ですので舌は燥の状態です。内臓熱も有りますので苔もあります。慢性的な少陽病では、実すれば陽明病、虚すれば太陰病になる傾向があります。大柴胡湯や柴胡加竜骨牡蠣湯など少陽病の実証には陽明病位の承気湯類の大黄の瀉下作用が入ります。また少陽病の虚証の半夏白朮天麻湯など太陰病位にも配当される薬方もあります。
太陰病の舌診
陰病は内臓に寒があります。その為、舌診は潤になっています。ただ太陰病は陰病の始まりです。太いの字には架け橋の意味があります。太陰病は陽と陰の架け橋でもあります。少し陽が残り四肢煩熱や唇の乾燥などの虚熱が残ります。舌診も薄い白苔が残ります。ただ陰証ですので舌は潤に成っています。太陰病の舌診は潤で薄い白苔が基本です。
太陽病も陰と陽の架け橋です。陰から陽へ移るため陰の寒が残り表寒の症状が出ます。