熟地黄と乾地黄の働きの違い

2023年1月17日;(写真は、熊本県南小国町黒川温泉の上の草原が広がる「風の丘」です。)

非常に重要で繁用される漢方薬味に地黄(ジオウ)があります。

地黄の使い分け

市場には生地黄(ナマジオウ)が無いため、実際には乾地黄(カンジオウ)と熟地黄(ジュクジオウ)を使い分けています。
漢方では古方派は乾地黄を好み、後世派は熟地黄を好む傾向があります。

古方薬議(コホウヤクギ)に「膚を潤し」とある様に皮膚が乾燥している時は熟地黄を使用します。
また血糖値が高い時などは「寒、血を涼し」で乾地黄を使用した方が良いと思われます。

八味地黄丸

漢方の古典である金匱要略(キンキヨウリャク)では八味地黄丸(ハチミジオウガン)は乾地黄で作る様になっています。
熟地黄が「腎気の虚を補う」、「微温、腎水を滋し、陰血を補う」を考えれば八味地黄丸には熟地黄が合います。乾地黄をお酒で俢治したのが熟地黄です。

八味地黄丸などの丸剤を造るにはジュクジュクした熟地黄では難しく乾地黄が便利です。
金匱要略には、乾地黄で作った八味丸を飲む時に「酒で服す」と成っています。結局は熟地黄と同じく「の乾地黄」+「の酒」の組合せが出来ています。
そのためお酒で服さない湯剤などの時は最初から熟地黄を使う必要があります。

乾地黄と熟地黄

採れたての地黄は薄い茶黄色の綺麗なイモです。これを生地黄(ナマジオウ)と言います。
訂補薬性堤要(テイホヤクセイテイヨウ)には「甘苦、大寒、火を瀉し」と有ります。
甘くて苦く、非常に清熱作用が強く、火(炎症や熱など)を取ると読めます。
浅田宗伯(アサダソウハク)の古方薬議には「味甘、寒・・・諸熱を解す。病人虚にして熱多きには、加えてこれを飲む」と、同様の記載が有ります。
生地黄は砂中に保存しますが、長期保存が難しく流通が殆どないです。入手が困難なため漢方薬として使われることは少ないです。

生地黄を乾燥させたのが乾地黄(カンジオウ)です。
訂補薬性堤要には「甘、寒、血を生じ、血を涼し・・・
古方薬議には「味甘、寒、痺を除き、血脉を通じ・・・

乾地黄をお酒に漬け蒸したのが熟地黄(ジュクジオウ)です。
訂補薬性堤要には「甘、微温、腎水を滋し、陰血を補う
古方薬議には「膚を潤し、腎気の虚を補う

生地黄、乾地黄、熟地黄

生地黄は大寒、乾地黄は、熟地黄は微温となっています。
生地黄と熟地黄の中間が乾地黄と考えられます。

乾地黄は、甘く苦い、寒、清熱作用として
熟地黄は、甘く、微温、補血作用で用います。

熟地黄で色白の美肌に!

漢方太陽堂の患者さんで、自律神経失調の女性の方です。熟地黄(ジュクジオウ)の入った連珠飲(レンジュイン)を服用していた患者さんがいらっしゃいました。
症状が出無くなった後も再発防止と体質改善目的で連珠飲を1日1回服用を続けられていました。
1~2年過ぎた頃、元々色黒だった彼女の肌が白くなっているのです。
聞いたところ「この漢方薬を飲んでいるとお風呂上りに鏡に映る自分が色白になってきました。昼間は元の色黒に戻っていましたが、徐々に昼間でも肌が色白になってきました。ありがとうございます。」と言われたことがあります。

熟地黄は体質的な色黒に合う

その後も、連珠飲に限らず熟地黄の入った温清飲(ウンセイイン)や四物湯(シモツトウ)などでも色白の地肌になる方々が何人もいらっしゃいました。皆さん1~2年以上の漢方薬の服用歴がある方々です。

漢方の後世派の一貫堂医学では色黒の人には黒い熟地黄などの漢方薬を服用させます。
また顔の赤い人には紅花(コウカ)や蘇木(ソボク)などの赤い漢方薬を服用させます。
東洋医学の形象薬理学です。

熟地黄と皮膚

熟地黄(ジュクジオウ)は「膚を潤し」、「陰血を補う」です。
お風呂上がりの皮膚血流が良い時には特に色白に見えるのでしょう。服用を重ねると更に皮膚血流が改善し日中でも色白になるのだと思われます。しかも熟地黄は肌に潤いを与えます。

皮膚血流と静脈血流に関し学会発表論文をご紹介します。
血流と地黄に関し興味のある方は以下をご覧ください。
興味深い論文です。

和漢医薬学大会

浅野年紀、松田秀秋、塩本秀己、久保道徳(1995)「漢薬・地黄の生薬薬理学的研究:血流を指標にした地黄の修治と薬能」
ラットを用いた生地黄(ナマジオウ)・乾地黄(カンジオウ)・熟地黄の単回投与と7日間連続投与の実験結果です。

  1. 皮膚組織血流
    生地黄・乾地黄は単回投与で血流増加する。
    熟地黄は投与回数の増加に伴い皮膚組織血流の増加作用が上昇する。
  2. 動脈血流
    生地黄のみ血圧低下作用、血管収縮抑制作用を示す。
    生地黄は、抹消の動脈血流を促進する、その作用は即効性である。
    作用機序は生地黄の動脈系の血管拡張作用による。
  3. 静脈血流
    熟地黄は静脈系の血流を増加促進する。その作用は単回投与ではなく7日間投与で優位な活性を示す。
    作用機序は血液レオロジーの改善による。
    しかし生地黄・乾地黄には静脈系の血流促進作用は認められない。
  4. 心拍数、脾臓組織血流に生地黄・乾地黄・熟地黄は影響を及ぼさない。

血液レオロジーとは血液の流動性です

末梢の毛細血管は、赤血球の大きさよりも小さく細い血管です。
狭い血管を通るため赤血球は自ら長細く変形し、血管を通過していきます。
この赤血球の変形能の能力を上げると、末梢の血流が改善します。
変形能の改善は、熟地黄だけでなく当帰(トウキ)などでも報告されています。その結果、血液レオロジーが改善します。