不妊症と東洋医学

東洋医学理論

2023年9月5日。写真は大分県竹田市、岡城近戸門です。

当帰芍薬散と貧血の不思議

当帰芍薬散という漢方薬があります。陰証で虚証、寒証、貧血などを伴う血虚に使用する漢方薬です。
金匱要略が出典です。本来は妊娠中の腹痛や女性の腹痛に使用する薬方です。
腹痛は下腹部が中心になります。

当帰芍薬散の証

痩せ型あるいは筋肉が軟弱な人が多いです。疲労しやすく冷え性で貧血の傾向があります。
妊娠中に服用し続けると流産を防ぎ、妊娠中毒症の予防をします。また産後の肥立ちや母乳の出方も良くなります。

妊娠腎

また妊娠経験のあるご婦人が、中年期に血圧が上昇し浮腫んでいる時に血圧を下げ浮腫も取れスッキリ痩せます。最低血圧が高い傾向にあるのが特徴です。

当帰芍薬散加減方

当帰芍薬散の処方内容は当帰3川芎3芍薬4茯苓4白朮4沢瀉4です。
当期、川芎、芍薬で血虚に対応します。
白朮、茯苓、沢瀉で水毒を除きます。
浮腫みの酷い時などは白朮1.9茯苓1.9沢瀉2を追加し増量すると効果が増します。

人参当芍散

浅田流を研究された大阪の長倉に人参当芍散という処方があります。当帰芍薬散の川芎半減加桂枝人参甘草です。
原方の川芎を半減し、気の上衝に対し桂枝甘草と、気虚に対し人参を加味した処方です。
当帰3川芎1.5芍薬4茯苓4白朮4沢瀉4桂皮1.5人参3甘草1になります。

当帰芍薬散の不思議

貧血の患者さんに当帰芍薬散や人参当芍散を投薬すると、証が合っていると3ヶ月ほどで貧血が改善します。
当帰芍薬散にも人参当芍散にも、成分として鉄分は入っていないのにです。しかも体質改善をすると貧血が再発し難くなります。

鉄分を含まれない漢方薬で貧血が改善する。
漢方薬が身体の機能を変えているとしか考えられません。
漢方の奥行を感じる事例です。

女性の性周期と漢方

女性の性周期で特徴的なのは生理です。
通常は、生理が来て低温期に入ります。生理初日より約2週間後に排卵が起き高温期に入ります。高温期が2週間続き、次の生理が始まります。女性の性周期はこれを繰り返しています。

生理前後の基礎体温の動きで東洋医学の証が把握できる場合があります。
生理の1日から数日前から基礎体温が落ち始めた時は、血虚の証が多いです。当帰芍薬散や人参当芍散、他の血虚剤が適応となる場合が多いです。
また生理が始まり1から2日で基礎体温が下がります。この基礎体温が3から5日掛かって下がる場合は瘀血の可能性が有ります。桂枝茯苓丸や桃核承気湯などが適応になる場合が多いです。

これらの他に基礎体温表では

  1. 排卵から高温期への基礎体温の上がり方がスムースでない場合。
  2. 高温期が安定しない場合。
  3. 低温期が36度2分を切り低体温の場合。
  4. 高温期の期間が長すぎる、或いは短すぎる。
  5. 低温期の期間が長すぎる、或いは短すぎる。

それぞれ、東洋医学の証が異なります。基礎体温表からは様々な情報が得られます。

衝脈と不妊症

東洋医学では不妊症に対し独特の理論と考え方があります。
漢方の古典、黄帝内経素問の上古天真論篇第一に「女性は14歳になると生殖能力が出来ます。任脉が完全に流通し、血海である衝脈も盛大になります。月経が定期的に下り、子を胎む能力が完備します。」とあります。

結婚しても任脉が完全に流通していない、或いは血海の衝脈が盛大になっていないと、東洋医学では妊娠し難い原因があると考えます。
東洋医学の治療にて任脉を完全に流通させ血海を盛大にすると、原因が除かれますので生殖能力を最大に発揮できます。

衝脈とは

衝脈は奇経八脈の1つです。
重要な要衝かなめの脈で衝脈です。
衝脈は二面性のような、奇経としての衝脈と、血海としての衝脈の面があります。二つの顏を持つのが衝脈です。

衝脈は子宮から発生しており、妊娠や生理不順、不正出血、流産など婦人科との関係が深い脈です。

衝脈、血海における不妊症治療

現在は卵胞ホルモンや黄体ホルモン、プロラクチンや甲状腺ホルモン、抗核抗体、抗精子抗体などの免疫など、様々な検査が可能です。
東洋医学では古典の指示に従い、血海が通ずれば西洋医学的様々な原因の異常も妊娠可能な状態まで改善すると考えています。

血海の診断点と治療

故入江正先生は血海である衝脈に於ける不妊症の診断点を6か所上げています。
それぞれのツボを中心とした直径10センチ位の丸の円です。
上部から順に

  1. 膻中を中心とした丸
  2. 巨闕を中心とした丸
  3. 中脘を中心とした丸
  4. 神闕。臍を中心とした丸
  5. 関元を中心とした丸
  6. 曲骨を中心とした丸

不妊症の方の場合、これら10センチの丸に糸練功やFTフィンガーテストが出来る術者はstを感じます。OTオーリンングテストではオープンになります。

不妊症の患者さんは6個の丸の内、2から4個の丸に異常があります。この血海の異常が消失する様に漢方薬を組みます。

血海を用いた不妊症の妊娠率

故入江正先生は、婦人科で妊娠しなかった不妊症の患者さんを血海である衝脈の漢方治療にて、投薬期間1年以内に14名中8名を妊娠させています。
私は入江先生にお教えを受けた後、独自の不妊症の診断点を見つけています。

参考文献
入江正。不妊症の診断と治療について。漢方の臨床37、11、P68からP77、1990