2023年8月11日。写真は経絡人形です。
人間の身体は電気刺激、直流電気で動いています。腕を曲げるといった脳からの指示も電気信号です。
東洋医学の漢方、鍼灸はこの電気信号を使って診断し治療をしていきます。肉体の電気刺激に関しては、誰でも出来る糸練功を参考にして下さい。
鍼灸の経絡、経穴と電気信号
東洋医学の経絡はこの電気信号が流れやすいライン線だと考えられます。正常安静時には経絡には8ガウス、0.8ミリテスラほどの磁束密度があると言われています。身体に異常が生じると経絡の磁束密度が増大すると思われます。
エレキバンが800から2000ガウス。80から200ミリテスラです。病的な患部や経絡、経穴などを糸練功や入江FT、オーリングテストで診るとエレキバンより遥かに強い反応が感じられます。
また経穴は経絡上の電気刺激を受けやすい箇所、反応点とも考えられます。当然ですが、電気刺激で動いている肉体は鍼治療や経穴への刺激で変化します。
漢方薬の刺激
婦人科に多用する漢方薬のサフランの服用方法は、湯飲みに熱いお湯を注ぎ何片かのサフランを入れます。エキスが抽出されるまで数分の間、手掌の労宮を蓋として手の平で湯呑を塞ぎます。サフランの精油で労宮が刺激を受けています。
このサフランの香りを嗅ぐだけで女性の頭痛が直ぐ取れる事があります。鼻粘膜から精油が吸収されたにしては血中濃度が上がる以前に頭痛が緩和されます。サフランの香りが刺激になり電気的信号を作っているのだと思われます。
金属との電位差による刺激
鍼治療の代替えとして使われる金属があります。経血に金属粒を張るだけの治療です。金属と人間の肉体や皮膚には電位差があります。金属粒を張ると電気的刺激が生じます。金属の種類を変えると、異種金属ですので様々な電位差を作る事が出来ます。
経穴を爪楊枝で刺激しても治療効果を発する事ができます。物理的な刺激が電気的信号を作っているのだと思われます。
金属の鍼と肉体の電位差
鍼も金属です。肉体が電気刺激で動いている事を考えれば、鍼を刺した物理的な刺激も大事ですが、金属である鍼を体内に刺す事により生じた鍼と肉体との電位差が重要と考えられます。
皮膚に漢方薬を張る治療法
また矢数道明先生は漢方治療百話の中で、経穴に漢方薬を貼り付ける治療法を紹介されています。漢方薬を肌の経穴に張り付けるだけで身体が変化していきます。漢方薬の精油成分が肌から吸収されるだけでなく、水剤、血剤等の漢方薬それぞれが肌とは電位差が異なる事を利用しているのだと思われます。
ツーメタルコンタクト
漢方と鍼灸の大家であった間中喜雄先生が経脈や経穴の補瀉を診るために開発されたのが、TwoMetalContact(ツーメタルコンタクト)で異種金属を使った方法です。
異種金属としては銀と銅が使われます。銀と同じような働きをする金属はアルミニウムや亜鉛です。また金と同じような働きをする金属が銅です。
塩水に銅とアルミを入れるとイオンが発生し電気が生じます。人間の皮膚の汗に塩分が含まれていることを考えれば、銅板とアルミ板に反応することは当たり前と言えば当たり前の事です。
これらの異種金属には電位差があり、それぞれ補瀉と寒熱に反応します。また経穴に使用すれば補瀉の治療にも応用できます。
入江正先生のツーメタルコンタクトで寒熱の判断
入江正先生は異種金属の補瀉を寒熱に応用し、漢方薬の五気、熱温平涼寒の判断方法を考案されました。
同様の方法で患者さんの肉体の寒熱の状態を診ることが出来ます。例えば
- 四逆散証。腹部中焦に熱証の少陽病位があり、四肢に寒証があれば四肢厥逆だと判断できます。
- 瘀血証。腹部下焦に熱証の陽明病位があり、下半身を主とする四肢に寒証、更に上焦から顔面に熱証があれば上熱下寒の瘀血証です。
- 少陰病。また腹部の中焦、下焦が寒証の太陰病位であり、心臓も寒証の少陰病位なら少陰病と判断されます。
異種金属を使うと、簡単に寒熱を判断し診断ができます。
X交差治療法
東洋医学の太極とは、肉体で言えば健康体になります。陰も無い、陽も無い状態が太極、健康ではありません。陰と陽がバランスを取り合っている状態が太極であり健康と考えています。
人間の生体は常にバランスを取り太極である健康体を維持しようとしています。それが自然治癒力です。黄帝内経の難経七十五難の勝復もその一つです。
間中喜雄先生は、「身体の臍を横切る帯脈を挟んだ上下でもバランスを取ろうとしている。また臍を縦切る任脉、督脉を挟んだ左右でもバランスを取ろうとしている。」と、原始信号であるX信号系を発見されました。
間中四分画診断では、臍を境に上下、左右に四分画します。漢方治療、鍼灸治療に関わらず治療法が完成すると、すべての反応が消えます。糸練功、FTではスムース。オーリングテストではクローズとなり太極と成ります。この四分画に背側、腹側を入れると8分画と成ります。
私達の感覚は鋭く、また時としていい加減です。
故入江正先生から「漢方治療、鍼灸治療の最終確認に四分画診断を行うよう」教わりました。入江正先生が鍼の加味方と言われていたのも、この四分画を使い治療法を完成しようとされていたからだと考えられます。
X交差を利用したイオンパンピング
このX交差を治療に発展させたのが間中喜雄先生が考案されたイオンパンピングです。IPは細い銅線コードで、両端に鍼をはさむ赤と黒クリップが付いています。片方の赤クリップにはダイオードが付いていて陰イオンが赤クリップから黒クリップへ流れる様に作られています。
入江正先生は「陰イオンの流れだけでは説明できない効果がある」とも言われていました。鍼を深く多数刺すのではなく、IPは上下左右に2穴だけ取穴し浅く刺し、IPで繋ぎ上下左右のバランスを取るのが基本治療法になります。
四分画診断
四分画診断を私は故入江正先生からご教示を受けました。入江先生の師匠である間中喜雄先生が提唱され、入江先生も診断の最後の締めくくりとして使われていました。
- 四分画診断とは人間の身体は、上下、左右にて常にバランスを取ろうとしている。
- 上下はお腹周辺の帯脈を挟んで。左右は身体の正面の正中線の任脉と背側の背骨の上の督脉を境にしてバランスを取っています。詳しくはX交差治療法を参考にして下さい。
左右が、逆に証が出現する
例えば肝臓に炎症があり東洋医学的に陽証の場合、肝臓の反対の左側にやや弱く陰証が出現します。
左膝に炎症があり陽証の場合、右膝に弱く陰証が現れます。左膝が陽明胃経の瀉法の麻杏薏甘湯証の適応する場合、右膝に現れたやや弱い陰証もこの瀉法で反応が消失します。
左膝の陽明胃経の陽証の麻杏薏甘湯証が病態であり、右膝の陰証は左膝に対してバランスを取ろうとしているのだと考えられます。この身体の動きが自然治癒力だと思われます。黄帝内経難経七十五難の勝復関係はこの自然治癒力を臓腑理論にて説明しています。
これらの現象は筋力テストやOT、FT、糸練功にて誰にでも追試できます。初心者の場合、このバランスを取るために出現した反応を病態と勘違いすることもままあります。
自然治癒力を高める事が東洋医学の本道だと感じています。
経気は末端で強くなる
人間の経絡は電気的な信号が流れやすいライン線です。この経気は手先や足先など身体の末端に近いほど強くなっていきます。
経気が強い指先に近い部分での反応と、経気の弱い体幹に近い部分での反応は異なってきます。この経気の強さを利用し、患者さんの服用量を調べる事が出来ます。
漢方薬や新薬の1日量を調べる
患者さんの身体が、経気の弱い部分に載せた漢方薬量でも反応すれば過量です。経気の強い部分でしか反応しない場合は、漢方薬量が不足しています。同様の方法で化学薬品の新薬の分量も調べる事が出来ます。
この経気は、男性は左手の反応が強く、女性は女性ホルモンの影響か右手の反応が強くなります。人間の身体は正中をはさみ左右対称に見えますが、実際には左右対称でない部分も多いです。例えば心臓もそうです。血圧も左心室に近い左腕と右腕では異なります。東洋医学の陰陽では男性は陽、女性は陰。左は陽、右は陰となっています。
実際の適量診では左右の手の違いや、漢方薬を載せてからの経過時間などの影響も考慮していきます。
入江先生の反応穴
故入江正先生は、幾つかの病ごとの反応穴を見つけられ私達にお教えくださいました。
- 1つは五志の憂の反応穴です。五志は精神神経症の判断に欠かせません。一部の痴ほう症にも反応します。
- 衝脈を使った不妊症の反応です。これは素問の上古天真論篇に基づく本来の東洋医学の診断法です。入江先生は不妊症に対して幾つかの論文を発表されていますので、興味のある方は見てみて下さい。
- 甲把南栄先生の腹診図からの風毒診です。風毒診では各種のウイルスとカンジタなどの真菌、溶連菌に反応します。
- 右迎香にてアレルギー性鼻炎、花粉症の診断です。鼻水が出ている患者さんがウイルスの風毒に反応が無く、右迎香に反応があれば花粉症、アレルギー性鼻炎と判断出来ます。花粉症、アレルギー性鼻炎の治療をしていきます。逆に右迎香に反応がなく、風毒塊に反応があれば風邪による鼻水と判断されます。風邪の治療をすれば鼻水は止まります。
- また生理痛の診断にお尻の大殿筋を鷲づかみにし、使われていたのを覚えています。
東洋医学は体表解剖学
蒙色と言う望診があります。蒙色は病ごとに、ある程度の出る場所が決まっています。蒙色はお灸で治療していきます。
例えば痔病は仙骨上部に蒙色が出ます。痔核、痔瘻、脱肛も仙骨上部に出ます。仙骨上部は痔疾患の反応穴として使えます。
病ごとに反応穴
30代の頃の私は反応穴を探すために多くの患者さんを診ていました。
咳の反応穴
娘が喘息だったことも理由の一つですが、最初は喘息の患者さんの全身を糸練功で診て行きました。1人の喘息の患者さんで幾つもの箇所に反応があります。次の患者さんも診て行きます。この患者さんにも幾つかの反応があります。次の患者さんも同様に反応の箇所を探します。
何人か診ると共通の反応がでる箇所が分かってきます。10人以上の喘息の患者さんを診ると背中の小腸経の天宗辺りに全員が反応があるのです。最初は喘息の反応かと思いましたが、気管支炎などでも天宗付近に反応があります。風邪で咳が出る時も天宗付近に反応がある事に気付きました。気管支拡張症も肺MAC症も間質性肺炎も天宗付近で反応します。
天宗付近は喘息ではなく、咳に反応しているのです。咳の反応穴を見つけ40年近く経ちますが、現在でも使用し有効な反応穴です。
不妊症の反応穴
入江先生は衝脈にて不妊症を診る事をお教えくださりました。私は不妊症の患者さんも何十人と調べ共通の反応を探しました。
不妊症の患者さんに共通の反応は三焦経の天髎です。ここの反応を取るのには少しコツが要ります。背中側から少し指先を倒し角度をつけないと反応が取れません。この反応は2人目不妊の原因となる高プロラクチン血症には反応しません。プロラクチンの反応は乳腺で直接に取った方が良いです。
私は衝脈の血海、不妊症の反応穴、乳腺、黄体ホルモンの反応穴、卵胞ホルモンの反応穴、ホルモン全般を見る帯脈穴。帯脈穴は帯脈では有りません。不妊症の患者さんでは、以上の6か所を必ず確認します。
妊娠時の反応穴
妊娠したかどうかの反応も身体に現れると考えました。妊娠した患者さんを数多く診ました。共通の反応が存在しました。
腋下から内側へ3寸ほど入った所です。妊娠している方は全員この場所に反応が出ます。随分経ってから、この場所の反応は瘀血の反応だと言うことに気付きました。胎児は東洋医学ではお母さまの身体に宿す瘀血になります。妊娠に限らず瘀血のある人は、この場所に反応が出ます。
様々な病ごとの反応穴
悪性リンパ腫や白血病、上皮性がん、浮腫、脳血流、夜尿症、糖尿病など様々な反応穴を見つけてきました。
アレルギーの反応穴
皮膚病は発赤腫脹の進行途中の段階では病変部で反応を診た方が確実です。しかし痂皮形成の段階になると、一貫堂の解毒症体質と同じ反応が出ます。
その為、皮膚病やアトピー性皮膚炎の反応穴を探したことがあります。有りました。胆経の曲鬢の上側です。頷厭の横当たりです。後に皮膚病やアトピー性皮膚炎の反応穴と思っていた箇所はアレルギーの反応穴だと言うことに気付きました。
反応穴の意味
腰痛やリウマチ、肝炎など病変部や愁訴部分がハッキリ分かるお病気は愁訴部分で反応を取った方が良いです。よりハッキリと信号が出ます。入江先生がお教えくださった愁訴診です。
ただ高血圧や糖尿病、高コレステロール血症など愁訴部分が分からない疾患も多いです。そのようなお病気では、反応穴が治療の大きな武器になります。
反応穴の共通点
人間の身体は陰面に小宇宙が出ます。六部定位脈診部も陰面、十二臓腑の腹診も陰面です。小田顔面の十二臓腑だけ督脉上の陽面に出ています。ただ顔面は限りなく陰面に近い陽面です。
反応穴は陰陽面
反応穴は殆ど陰陽面です。陰面と陽面の境に出ることが多いです。また2、3人に共通の反応が有っても反応穴と決めない事です。最低10人以上に共通の反応。出来るだけ30,40人と多くの患者さんで確認を取る方が良いです。