写真は、京都市貴船の川床料理です。
皮膚の上から行う望診と異なり、舌診と眼瞼内側は粘膜です。そのため通常の皮膚からの望診より舌診と眼瞼内側は、内臓の状態や慢性的な病位の状態などをより鮮明に診ることができます。
若い頃に木下は古方や中医学を学び舌診を勉強してきました。瞬時に身体の状態を現す脈診より舌診はスピードが遅いです。「木を診るより森を診る」事が大事だと言う考えに至りました。細かく分類するより患者さんの生体全体を診る事が大事だと考えています。ここから述べる舌診は木下独自の舌診です。
舌診
ここでは簡単な舌診の見方をご紹介します。脈診と異なり舌診は反応が遅いため、慢性的な体質的な情報を診ると考えた方が良いかもしれません。
急性の太陽病位では内臓に病が侵入していないため舌には変化が出ていないと考えるべきです。もし太陽病で舌に変化が出ている時は慢性的な病や体質的な傾向の影響が舌診に出ている可能性があります。その情報により急性の太陽病の証の推測もできます。
燥湿
舌や舌苔が湿っているか乾燥しているかは、陰陽で決まります。陽病の少陽病位や陽明病位では舌は乾燥しています。逆に陰病の太陰病位や少陰病位では舌は湿っています。
苔色
木下は舌苔の色や厚みは内臓熱の反映だと考えています。白苔、黄苔、褐色苔、黒苔になるほど内臓熱が強くなります。苔の厚みも内臓熱が強くなればなるほど厚くなります。
注意点があります。黒苔は奥の舌中心部より生え始めます。病が進行すると舌全体に黒苔が広がります。改善し始めると黒苔は奥の舌中心部へ終息していきます。男性は柴胡加竜骨牡蠣湯、女性は桃核承気湯がファーストチョイスです。また少陽病の下痢に使う黄連湯証は舌奥にベタベタの黄苔が付きますので鑑別に注意が必要です。
太陰病位の舌診
太陰病は陰証の始まりであり、陽と陰の架け橋です。そのため唇の荒れや手足の煩熱など陽の熱が虚熱として残ります。舌診でも陽病の内臓熱による微白苔が残ります。また陰証ですので舌は湿になります。太陰病位の舌は微白苔で湿になります。
歯切り痕
歯痕は胃内停水の一つです。胃などの消化器の浮腫みが原因です。浮腫みが歯により抑えられ歯痕ができます。歯痕の有る人は1分間くらい舌を出していると歯痕が消えていきます。浮腫みだと言うことが分かります。胃内停水が酷いと腹診で振水音が聞こえます。軽いと歯痕ができます。胃内停水には半夏証の陽証と白朮茯苓証の陰証があります。それぞれ特徴があります。糸練功による腹診で簡単に鑑別できます。
舌下静脈、瘀班、紫舌
瘀血が慢性的にあります。20、30年前に木下は全国を講演で廻っていました。舌診をしていた時、北海道の聴衆の先生方は皆さん舌下静脈がシッカリ有りました。寒い環境の食生活の影響だと思いました。肉食、脂物の多い人は舌下静脈があります。野菜中心の人は舌下静脈が少ない傾向にあります。
地図状舌、剥落苔、裂紋舌
舌苔が一部剥がれた地図状舌や裂紋が有る舌は脾虚があります。
鏡面舌
舌の乳頭が消えたように見え、舌がツルツルに見えます。八味丸証などにも見られることがあります。八味丸証で白苔が有る場合は、六味丸や八味丸去附子加黄柏の場合もあります。鏡面舌は予後が良くない場合も多いです。
舌の部位
舌の部位は腹診の部位と似ています。舌先は心、肺に属します。舌の両側は肝胆に属し、舌奥は腎に属します。木下は原則は原則で実際と異なると考えています。しかし舌先だけは心の場合が多く、舌先が赤いと心の赤味と捉えています。舌先の赤味が明るいと桂枝甘草証が多く、色が濃いと心包三焦の瘀血や血熱が疑われます。
体質と病の違い
例えば、舌診で体質的に太陰病位にある時、陽の瘀血の子宮筋腫は漢方治療が早く効く可能性があります。逆に少陽病位の実証や陽明病位の体質的生体に於いて子宮筋腫は難治の可能性が出てきます。体質的な病位や虚実と、病の病位や虚実がズレている程治りやすいです。体質的な証と病の証の虚実や病位が近いほど治療に時間が掛かり難治です。薬量もそれに合わし調整します。