病と東洋医学の体質

漢方コラム

2021年1月5日。写真は長崎県平戸市生月島、サンセットウェイです。

東洋医学に於ける肌の色

東洋医学の望診で診るポイントに肌の色が有ります。日焼けではなく地肌が黒い人は、後世方の一貫堂医学の解毒症体質の方が多いです。解毒症体質には、温清飲、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯などを使用します。

解毒症体質の肌は渋紙色と表現されます。リンパ関係の免疫が弱く頸部リンパ腺の瘰癧や、脂質代謝異常による脂漏性なども特徴になります。

解毒証体質の基本処方

解毒症体質には四物湯と黄連解毒湯の合方による温清飲が基本になります。温清飲の加味方が柴胡清肝湯、更に皮膚病に対応して加味したのが荊芥連翹湯です。

一般的な漢方の教科書に書いてある「幼少期は柴胡清肝湯、青年期以降は荊芥連翹湯」に拘る必要はありません。大人でも柴胡清肝湯を使用する頻度は高いです。

熟地黄

四物湯の入る薬方が適応する人は地肌が色黒の人が多いです。熟地黄を煎じると真っ黒で甘い煎じ薬が出来あがります。真っ黒の煎じ薬は色黒の人に合います。この体質では、食養生は甘い物が厳禁と成ります。同時に脂質を吸着し便に排泄するために線維食が必須です。東洋医学の形象薬理学です。色黒の女性が四物湯の合方処方の連珠飲を1、2年服用すると色白になる方が多いです。

体質と異なる病態

本来の体質と異なる病態を呈する患者さんがいらっしゃいます。

子宮筋腫の瘀血

例えば血虚の当帰芍薬散型タイプの体質の方に、子宮筋腫。血虚と真逆の瘀血の病が出来ることが有ります。このように体質と真逆の病気の場合、短期間で比較的に治しやすい場合が多いです。逆に瘀血の桂枝茯苓丸型タイプの体質の方に、体質通りの子宮筋腫、瘀血が出来ると治すのに時間が掛かり手こずります。

皮膚病

皮膚病でも色白の水っぽい肌の方に出来た脂漏性湿疹は短期間で治せます。しかし色黒の解毒症体質、体質的に脂質代謝異常の気がある方に出来た脂漏性湿疹は治すのに時間が掛かります。

皮脂のスクアレンに抗菌作用

また解毒症体質、皮膚がオイリーで皮脂のスクアレンが多いタイプの方に出来たカンジタ症は治しやすいです。スクアレンは真菌、カンジタ菌に対し抗菌作用が有ります。皮脂の少ない色白の水っぽい肌の方に出来た真菌症は治すのに時間が掛かります。

漢方の治療、体質改善に要する期間を左右する要素

  1. 体質と病態によって左右されます。
  2. 発病から正しい漢方治療を開始するまでの罹患期間。罹患期間が永いと治療にも時間が掛かり、罹患期間が短いと治療期間も短くなるケースが多いです。
  3. 壊病に陥っている場合は治療期間が長く掛かります。

壊病とは

壊病は破壊された病です。壊病とは、こじれた病で、本来の症状と異なる症状を呈します。漢方の古典の傷寒論には誤治、誤った治療により生じた病である壊病が出てきます。壊病は誤治だけでなく、罹患期間が長くなったり養生が間違っていても生じると考えられます。

壊病の治療

壊病は、もつれた糸をほぐす様に治療していきます。この糸を引けば治ると通常の治療をすると、余計にもつれてしまいます。糸を引くのではなく、もつれを先ずほぐします。ほぐし終わってから、糸を引いて治していきます。

壊病と糸練功

或いは、糸練功で診ると強い反応があります。その治療をすると、下から次の反応が出てくることが有ります。その反応を次から次へ取っていきます。最後に下から別の反応が出てこなければ、それが最後の治療の糸になります。

体質を変える食養生。四方固め

体質改善には食養生が大事です。食養生では組合せにより効果が増す事が有ります。食養生四方固めは、葉緑素とミネラル、利胆作用と発酵食品の4種です。

葉緑素とミネラル

緑の野菜と海産物、海藻、頭ごと食べられる小魚類、ミネラルを同時に摂ると緑の野菜の働きも海産物の働きも増す事が有ります。保健食品では緑の野菜に相当する葉緑素製剤とカルシウム剤、ミネラルに相当する海産物を同時に服用すると効果が増し身体に優しくもなります。

マグネシウムとカルシウム

葉緑素はマグネシウムクロロフィルです。マグネシウムとカルシウムが拮抗関係ですので、お互いに毒消しをするのかもしれません。またマグネシウムとカルシウムにて骨を形成しますので骨粗しょう症にもお勧めです。

苦みと発酵食品

苦みやアクのある食べ物は利胆作用があります。漬物、ヨーグルトなどの発酵食品、キノコなどの菌糸体、乳酸菌製剤と相性が良い場合が多いです。発酵、菌糸体は東洋医学の臓腑である小腸の腑に配当されます。

利胆作用と腸内細菌叢

生理学的には利胆作用と腸内細菌叢の関係だと推察されます。胆汁の界面活性作用により脂溶性食物と水性食物が混ざり、食べ物が水溶性に成ります。腸内細菌が活発に動ける環境が出来あがります。軟便がちな方、腸内異常発酵でガスの多い人にはお勧めです。

脂肪分や卵の黄身を摂ると胆嚢が収縮し胆汁が排泄されます。胆石のある方は胆嚢収縮により胆石が動き痛みが生じることが有りますので注意が必要です。

漢方の薬性の五気

気味と言う言葉が有ります。五気と五味の事です。

五味

五味は食や漢方薬を五つの味に分ける方法です。酸っぱい、苦い、甘い、辛い、塩からいです。

五味の働きは、作用する東洋医学の臓器に関係します。酸は肝、苦いは心、甘いは脾、辛いは肺、鹹は腎に作用します。五味は東洋医学の臓腑との関係です。

五気について

五味は五気とは異なります。熱、温、平、涼、寒の五段階が五気です。

身体に熱があるか、身体を寒が支配的なのか。漢方薬や食物が身体を冷やすか、身体を温めるかの薬性が五気です。

身体の寒熱

身体の寒熱による症状が分かると、ご自分で今の身体の状態が判断でき、ご自分に合った食養が分かります。

寒による症状は
  • 陰証は寒が支配的です。
  • 冷え性。身体全体が冷え性である事が大事です。以下は例外です。
    1、手足のみ冷える場合は、交感神経の緊張により末梢血管が収縮している場合もあります。漢方では四肢厥逆と言います。これは少陽の熱証です。
    2、足は冷えるが顔は逆上せる場合は、瘀血証で熱になります。
  • 下痢がち。
    1、下痢の後に肛門に灼熱感が有れば、陽証で熱性になります。
    2、ガスが多い、便器に付いた大便が水栓で流れないなど、胆汁の流れが悪く脂溶性便です。瀉心湯証の熱性です。
  • 尿量が多い、尿色が薄い、失禁をする。尿が透明な場合は明らかに寒証です。
  • 女性で、薄く透明から白い色のオリモノ
熱による症状は
  • 陽証は熱が支配的です。
  • 赤ら顔、暑がり。手足の火照りは太陰病の虚熱の場合があります。虚熱は身体が疲れた為に逆に火照ります。
  • 便秘。年配者のコロコロ便、兎便は強い熱性ではありません。
  • 尿量が少ない、尿色が濃い
  • 女性で、濃く褐色のオリモノ
  • 不眠、目やに、腫物。
    1、目やには熱証です。
    2、不眠は心と身体が弱って生じる場合もあります。温胆湯証や帰脾湯証は陰証です。
    3、罹患期間が長い腫物は、肉芽形成が出来ず陰証の場合があります。托裏消毒散証や千金内托散証です。

漢方生薬の五気

熱温平涼寒の五段階の他に大熱、微温。微寒、大寒を入れて九段階に分けます。

  1. 大熱。附子、呉茱萸。人参剤(微温)で取れない冷えは乾姜(熱)で取ります。乾姜で取れない冷えは呉茱萸(大熱)で取ります。
  2. 熱。山椒乾姜。大建中湯、白朮散には山椒が入っています。苓姜朮甘湯、柴胡桂枝乾姜湯には乾姜が入っています。
  3. 温。桂枝(シナモン)、川芎、黄耆、陳皮、麻黄、生姜、朮、紅花大棗
  4. 微温。熟地黄、朝鮮人参
  5. 平。阿膠、酸棗仁、牡蠣殻、枸杞子山薬(ヤマイモ、自然薯)甘草、香附子、桃仁。桃仁は平、牡丹皮は微寒です。そこに桃仁と牡丹皮に薬性の違いがあります。
  6. 涼。滑石、牛黄、薄荷菊花粳米(うるち米、玄米)
  7. 微寒。牡丹皮、芍薬、沢瀉、竹葉。利水剤は一般的に温性です。沢瀉の入った五苓散、猪苓湯は身体を冷やす傾向があります。
  8. 寒。大黄、枳実(夏ミカン)、釣藤、黄連、黄芩、黄柏、山梔子(クチナシ)、竜胆、知母、柴胡。白虎湯には知母、粳米が入っています。竜胆瀉肝湯には竜胆、黄芩、沢瀉、山梔子が入っています。枳実、枳殻と陳皮、橘皮は五気が異なります。そこに薬性の違いが現れます。
  9. 大寒。石膏

青地は食品として流通しています。

紅茶は温から微温

生姜紅茶の生姜は乾姜(熱)です。紅茶は全発酵してあるので温から微温です。生姜紅茶は非常に身体を温める食材です。同じく紅茶にシナモン(桂皮、温)も身体を温める働きが強くなります。

玄米

玄米(粳米、涼)は身体を冷やします。副食として身体を温める食材も必要です。また玄米にはフイチン酸が入っているため、身体の中のミネラル分を排泄します。玄米を常食する場合は、ミネラルの補充もしないといけません。

玄米は涼、降です。食品ですが白虎湯の構成薬味です。肥満症、高血圧症、初期の糖尿病、多血症などの人には合っているかもしれません。