太陽堂漢薬局の漢方学会・研究会での発表論文

太陽堂漢薬局が、東洋医学関係の学会・伝統漢方研究会全国大会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。

【 卵管狭窄・卵管閉塞 】

2002年10月 中華中医学会 中日中医方薬 応用学術検討会 (中国・北京中医薬大学)

木下順一朗

太陽堂漢薬局

福岡県 福岡市・日本

[諸言]

卵管狭窄・卵管閉塞が原因不妊症と成っている婦人は非常に多い。

淋菌やクラミジアなどの感染症による卵管炎などで卵管狭窄や卵管閉塞を引き起こすことがある。この様な炎症によって卵管が周囲臓器と癒着すると、卵管の蠕動運動が妨げられ、卵の輸送障害も生じたりする。その結果、不妊症・子宮外妊娠・流早産や異常分娩の原因となることもある。また子宮内膜症が進行したために起きた卵管狭窄など卵管性不妊の原因は様々である。

西洋医学では卵管性不妊に対し卵管造影検査や腹腔鏡検査などで卵管の狭窄や閉塞を見つけ、卵管通水治療・腹腔鏡と卵管鏡を組み合わせた卵管疎通術、子宮内膜症の場合には腹腔鏡を行い卵管周囲の癒着の剥離を行う。また体外受精・胚移植法などが有効とされている。

今回、卵管狭窄に対し六君子湯が有効であった不妊症例について報告する。

〔対象並びに方法〕

全例西洋医学的検査により卵管狭窄・卵管閉塞症と確認診断され、西洋医学的な治療を行ったが改善されず、卵管が通じず妊娠に至らなかった症例を対象とした。また全例西洋医学の治療を中止し東洋医学の治療のみとした。

望診・問診により脾虚を確認した症例も有るが、脾虚を明確に確認出来ない症例も有った。

症例1:38歳、女性、主婦

風景030

主訴:卵管狭窄

既往症:特記すべき事なし。

現病歴:結婚して9年目。西洋医学の婦人科に於いて卵管狭窄と診断され治療を続けたが妊娠せず、2000年3月13日来局相談となった。

現症:身長158㎝、体重52㎏、やや顏に浮腫あり、顏色普通。舌診は潤で微白苔。性周期は28日で順調、生理痛も無い。

治療経過:六君子湯を1日2回、スクアレン(300㎎/D)1日1回を投与した。

6月12日、生理が遅れており、妊娠している可能性がある事が判明。

6月25日、西洋医学の婦人科にて妊娠6週目との診断される。その後、流産防止の目的で当帰芍薬散加芍薬3gを1ヶ月間服用し無事出産となった。

卵管狭窄により9年間妊娠しなかった婦人が、僅か2ヶ月の六君子湯の服薬で妊娠した症例である。

症例2:31歳、女性、主婦

主訴:卵管狭窄・卵胞発育不良

既往症:子宮後屈、子宮外妊娠

現病歴:結婚して8年。4年前に子宮外妊娠、妊娠はその前もその後も無い。西洋医学婦人科の検査により卵管狭窄と診断される。また卵胞の発育が悪く卵胞が小さいとの指摘を受ける。西洋医学的治療を続けてきたが妊娠せず、2002年4月19日東洋医学の治療を希望し来局された。

現症:身長161㎝、体重49㎏、性周期は30~35日、月経量は少なく生理期間は7日間。口渇・口乾は無く水分を好まない。発汗量は少なく尿量も少ない。大便は下痢と便秘を繰り返している。舌診の結果は地図舌・舌質淡で脾気虚が伺える。右下肢の膝より下に浮腫が有り、右膝部分に下肢血栓症が有る。

治療経過:卵管狭窄に対し六君子湯1日2回、卵胞の発育不良に対し桂枝加竜骨牡蠣湯を1日1回投与する。

東洋医学の治療開始後、食欲もあり体調も良いと本人が報告する。

治療開始3ヵ月後、西洋医学婦人科にて妊娠を確認される。

症例3:30歳、女性、事務職

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主訴:卵管狭窄

既往症:無排卵月経

現病歴:不妊症で西洋医学婦人科を受診。当初は無排卵月経の診断を受ける。ドオルトン、プレマリン、クロミッド(排卵誘発剤)、当帰芍薬散で、排卵するように成ったが妊娠せず。卵管造影の結果、両方の卵管が狭窄していることが判明。内膜症や細菌感染はない。1年間治療するが卵管が通らず、通常妊娠は不可能との診断を西洋医学婦人科にて受ける。

2002年7月27日東洋医学の治療を希望し来局。

現症:身長158㎝、体重50㎏、血圧100/60mmHg。日中発汗少なく、盗汗がある。便通は下利軟便。やや睡眠障害がある。性周期は35日、生理期間は7日間、生理痛がある。

治療経過:六君子湯1日2回、スクアレン(600㎎/D)を1日2回に分け投与した。

服用14日目、卵管造影の再検査を行う。今まで1回も卵管が通じた事が無かった。しかし今回は卵管が通じている事が確認される。また以前は卵管造影時の痛みも酷かったが、今回は痛みも全く無かった。

〔結果〕

今回報告した3症例を含め、西洋医学的治療が無効だった卵管狭窄であっても六君子湯で卵管が通じる事が多い。また治療期間も2週間から5ヶ月程で終わり短期間である。

〔考案並びに結論〕

不妊症全般に対する六君子湯の治療症例はすでに報告例がある。

しかし卵管狭窄に対する六君子湯の報告例は見受けられない。今回は不妊症の中で明確に卵管狭窄が原因と成っている場合の六君子湯の治療症例を報告した。

六君子湯は人参・白朮・茯苓・半夏・陳皮・甘草・大棗・生姜で構成され、四君子湯と二陳湯の両方意を持っていると思われる。卵管狭窄が、どの薬味により改善されるのか、又はこれらの薬味の相互作用にて改善されるのか今後の研究を待たないといけない。

また卵管狭窄に対する西洋医学的治療は不妊症患者に苦痛を強いる場合も多く、六君子湯はもっと汎用されてもよい処方と考えられる。

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