太陽堂漢薬局の漢方学会・研究会での発表論文

太陽堂漢薬局が、東洋医学関係の学会・伝統漢方研究会全国大会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。

【 赤芽球癆 】

2013年11月 伝統漢方研究会第10回全国大会 (日本・セルリアンタワー東急ホテル)

木下順一朗

太陽堂漢薬局

福岡県 福岡市・日本

[諸言]

赤芽球癆は難病指定である再生不良性貧血の一つです。

通常の再生不良性貧血は赤血球以外に血小板や白血球も減少します。

それに対し赤芽球癆は、赤血球だけが減少するのが特徴で再生不良性貧血の中では特殊なタイプとなります。

赤芽球癆は造血幹細胞に異常が生じ赤血球産生が減少し貧血となります。

赤芽球癆は先天性の染色体異常、ウイルス感染、薬剤性が原因となることが知られています。また免疫抑制剤にて赤血球の改善がなされることから、免疫が造血抑制に関わっていると推測されています。

【貧血と漢方の証】

貧血に対する主薬方は、腎に配当される四物湯(血虚)と脾に配当される四君子湯(気虚)であります。

四物湯(当帰・川芎・芍薬・地黄)に阿膠の血証が加わると、芎帰膠艾湯や猪苓湯合四物湯の方意となります。

また四君子湯(人参・白朮・茯苓・甘草)からは、帰脾湯や加味帰脾湯の方意へと発展します。

漢方古典4

「肝は血を蔵し」で肝の当帰からは当帰建中湯、更に当帰建中湯に「補薬の長」である黄耆を加え帰耆建中湯へと貧血の薬方は広がっていきます。

さらに黄耆に四物湯と四君子湯を加味合方すると、十全大補湯へと変化していきます。

腎の五色は「黒」、脾の五色は「黄色」です。著明な貧血の顔色不良は脾の黄色であり、貧血症状の息切れ、動悸、倦怠感等も脾虚の症状に合致します。

【症例】63歳、女性

主訴:赤芽球癆

既往歴:大腿部腫瘍

現病歴:一昨年4月に発病し、現在は2ヶ月に1回血液を入れ替えている。

服用薬:ネオーラル(免疫抑制剤)、エクジェイド(鉄キレート剤)、ファモチズン(ガスター)を服用している。

現症:身長145cm、体重45kg。血圧105/68mmHg。本人は顔色が悪いと言うが輸血のためか顔色は悪く見えない。

輸血による鉄分過剰のせいか、舌は乾燥し黄苔が厚い。また歯切痕があり胃内停水が伺える。冷えのぼせは無く、口渇もない。発汗少なく二便正常。

糸練功結果:

骨髄の反応 腎陽証-0.1合Ⅴ

骨髄の反応 脾陰証-0.3合Ⅵ

頚椎5番の反応 膀胱陰証-0.2合Ⅴ

選薬:

骨髄に、帰脾湯加全蝎末0.14紫根10。分2、朝食前、寝る前

頚椎に、桂枝加苓朮附湯合防已黄耆湯を選薬 1/4量をエキス剤にて分1、夕食前。

治療経過:1ヵ月後

輸血の間隔が広がり、今回は輸血をしなくて大丈夫だった。また、輸血後のヘモグロビンの下がり方も緩やかに成ってくる。

1ヵ月後糸練功結果:

骨髄の反応 腎陽証3.2合Ⅱ

骨髄の反応 脾陰証2.9合Ⅴ

頚椎5番の反応 膀胱陰証4.1合Ⅱ

選薬:

骨髄は、帰脾湯加全蝎0.12熟地黄3.3紫根10(全蝎減、塾地黄追加)

頚椎は前月と同薬方。

2ヵ月後、血液検査でフェリチンが大幅に下がっている。赤血球も上がってきて、体調は非常に好調。

2ヵ月後糸練功結果:

骨髄の反応 腎陽証5.2合Ⅰ

骨髄の反応 脾陰証4合Ⅱ

頚椎5番の反応 膀胱陰証6.8合Ⅱ

選薬:

骨髄は、帰脾湯加甘草0.4熟地黄3.3紫根10(全蝎抜き、甘草追加)、黒帰脾湯加紫根。

頚椎は前月と同薬方。

生薬-地黄

3ヵ月後、身体の疲労感は消失。坂道でも苦しくなく、輸血の必要なく輸血していない。

3月後糸練功結果:

骨髄の反応 腎陽証6.8合+(3)

骨髄の反応 脾陰証5.1合Ⅰ

頚椎5番の反応 膀胱陰証7.3合Ⅰ

選薬:

骨髄、頚椎共に前月と同薬方。

4ヵ月後、輸血の必要はなく、1ヶ月前より西洋薬の免疫抑制剤は飲んでいない。臨床検査の結果も良くなり、赤血球、白血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、網赤血球絶対数、全て改善している。体調も凄く良く、疲れもない。

4ヵ月後糸練功結果:

骨髄の反応 腎陽証8.2合+(2)

骨髄の反応 脾陰証6.8合+(3)

頚椎5番の反応 膀胱陰証9.1合+(3)

選薬:骨髄、頚椎共に前月と同薬方。

その後、改善に伴い黒帰脾湯を減薬、翌月臨床結果でやや悪化。従来量に戻す。

【臨床検査値の推移】

漢方治療前と漢方治療開始後の臨床検査の推移をグラフとして表示する

漢方治療前                 漢方治療開始後

漢方学会011

【考按並びに結論】

漢方治療前の西洋医学的治療は、輸血とネオーラル(免疫抑制剤)であった。漢方治療2日月後には、輸血の必要性も無くなり免疫抑制剤も服用していない。

漢方治療にて明らかに骨髄の造血幹細胞が活性化していることが推測される。

また、2006年11月 伝統漢方研究会第3回全国大会(日本・横浜シンポジア)にて「漢方による赤血球・白血球・血小板減少症治療の可能性」と題して太陽堂漢薬局丹波千香子が抗がん剤の副作用による血小板・赤血球・白血球減少と脾腫に対する治療例を発表している。この発表例では赤血球・白血球・血小板・脾腫いづれも黒帰脾湯にて改善している。

これらの症例を考えると、黒帰脾湯にて造血幹細胞の改善が行われただけでなく、赤血球・白血球・血小板の産生・破壊を黒帰脾湯は正常化していると推定される。

【今回使用した漢方薬】

桂枝加苓朮附湯合防已黄耆湯

桂枝加苓朮0.8/D:長倉製薬(株)

防已末0.24/D

黄耆末0.25/D

加工附子末0.26/D:三和生薬㈱

黒帰脾湯加甘草0.3紫根10/D

紫根10、熟地黄5、白参白朮茯苓炙酸棗仁竜眼肉3、黄耆当帰2、遠志大棗1.5、甘草1.3、木香生姜1

参考文献

日本漢方協会:実用漢方処方集,P72 – 73,㈱じほう,東京,1998

太陽堂漢薬局 福岡県福岡市博多区中呉服町1-26-6F 092-263-3590

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