太陽堂漢薬局の漢方学会・研究会での発表論文

太陽堂漢薬局が、東洋医学関係の学会・伝統漢方研究会全国大会にて発表報告した論文です。ご覧下さい。

【 後縦靱帯骨化症(OPLL) 】

2002年11月 国際中医薬論壇 (中国・南京中医薬大学、江蘇省中医薬局)

木下順一朗

太陽堂漢薬局

福岡県 福岡市・日本

[諸言]

〔諸言〕後縦靭帯骨化症ossification of posterior longitudinal ligament(OPLL)は脊柱を縦走する後縦靭帯が骨化し増大伸展する病気です。その結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄と脊髄から分枝する神経根が圧迫され知覚障害や運動障害等の神経障害を引き起こします。また黄色靱帯骨化症(OYL)や前縦靱帯骨化症(OALL)を合併しやすいです。

日本では難病(特定疾患)に指定され、一般外来を受診する成人の平均3%に発見されます。中華人民共和国でも50歳以上の2.7%に認められ東アジアに多く報告されています。後縦靭帯骨化症の原因として全身的骨化素因、局所の力学的要因、炎症、ホルモン異常、カルシウム代謝異常、糖尿病、遺伝、慢性外傷、椎間板脱出、全身的退行変性などが挙げられていますが現在のところ不明です。ただ高率な多発家系が存在することにより遺伝的背景があるのは間違いないと考えられています。

症状として最初は首筋・肩周辺・手の指先に痛み・しびれがあり、徐々に症状の範囲が拡がり、手指の運動障害、下肢のしびれや知覚障害、運動障害などが出現してきます。更に慢性的な経過をたどり、次第に神経障害が強くなります。重症になると排尿・排便障害なども起こり介護無しでは日常生活が困難となります。

現在、治療として対処療法しかなく保存的治療と手術療法が行われています。

今回、後縦靭帯骨化症に漢方治療が有効であった症例について報告します。

〔対象並びに方法〕

漢方古典1

全例西洋医学的に後縦靭帯骨化症と診断された症例である。投与前に四診を行い、投与前後の自覚症状の改善と他覚的改善を基に効果判定を行った。

症例1:57歳、女性、主婦

主訴:後縦靭帯骨化症、下肢の運動障害

既往症:蓄膿症、虫垂炎

現病歴:以前から手にしびれが有り、1995年西洋医学の病院にて後縦靭帯骨化症と診断される。1996年頚椎の手術治療を受けるが症状は改善せず、その後は鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミンB12剤の内服を続けている。東洋医学的治療を希望し1999年10月10日来局相談となった。

現症:身長159㎝、体重70㎏、結膜充血し血圧は変動性、二便正常。口渇無し。舌は乾燥し白苔があり舌下静脈の怒張が見られる。首から肩への痛みと凝りが強く、足の回転が上手くいかず歩行も不自由である。

治療経過:後縦靭帯骨化症に対し越婢加苓朮湯1日2回、竜仙(太陽堂漢薬局開発。ヨクイニン・青皮・甘草・大棗・降香・生姜・白参)1日1回投与した。

1ヵ月後、11月12日首が回り痛みも減少し患者さんは大喜びである。

8ヵ月後、2000年6月20日後縦靭帯骨化症による自覚症状が全て消失した。患者さんはクルクル回ってみせ「こんなに動けるように成った」と大喜びであった。その後6ヵ月間、同処方を服用し廃薬とした。

症例2:62歳、男性、会社員

健康131

主訴:後縦靭帯骨化症、両手小指のしびれ

既往症:高血圧

現病歴:西洋医学レントゲン線写真検査にて後縦靭帯骨化症と診断される。頚椎2番~5番まで骨化、特に頚椎5番の骨化が大きく脊柱管が通常の30%位まで狭くなっているとの事である。症状としては両手小指のしびれを訴えるだけである。現在西洋医学的治療が無いとのことで東洋医学の治療を希望し2002年2月6日来局相談となった。

現症:身長161㎝、体重67㎏、血圧148/90mmHg、赤ら顔、食欲旺盛、二便正常。水分の摂取が多い。

治療経過:後縦靭帯骨化症に対し越婢加朮湯と竜仙を1日2回同時服用とした。3ヵ月服用後、両手のしびれは 時々あるが殆ど感じなくなったとの事である。5ヵ月後、両手小指のしびれは完全に無くなり、後縦靭帯骨化症による症状は全て消失した。

症例3:42歳、女性、会社員

主訴:後縦靭帯骨化症 既往症:特記すべきことなし。

現病歴:肩が引きつるような痛みと腕のだるさ軽いしびれがあり西洋医学検査MRIにて調べる。その結果、頚椎の靱帯に骨化部分があり後縦靭帯骨化症と診断された。整形外科にて電気治療とマッサージを受けていたが改善せず2002年4月30日東洋医学的治療を希望し来局相談となった。

現症:身長152㎝、体重39㎏、肩と首の慢性的痛み、腕のだるさ、しびれ。歩くと膝に力が入らず軽い歩行障害がある。肌は弱くかぶれ易い。口乾はあるが水分の摂取は少ない。性周期順調。生理痛は無い。

治療経過:後縦靭帯骨化症に対し越婢加朮湯と竜仙を1日2回の同時服用で投与した。

1ヵ月後、5月25日しびれと足の運動障害がやや改善する。

2ヵ月後、6月25日非常に調子が良く、患者は東洋医学の効き目に驚いたとの事。

3ヵ月後、7月19日足の運動障害も含め全ての症状が消失した。

〔結果〕

健康013

3例とも治療開始より1ヵ月以内に症状の改善が観られた。また漢方薬の内服を続ける事により後縦靭帯骨化症による症状、痛み・しびれ・運動障害が完全に消失した。

〔考案並びに結論〕

難病と言われる後縦靭帯骨化症に対して現在有効な治療法が少ない。漢方薬の内服療法は患者への負担も少なく、今後検討されるべきだと考える。また器質的変化を伴う後縦靭帯骨化症が漢方の内服で何故改善するのか今後の研究を待たないといけないと考える。

後縦靭帯骨化症(OPLL)とは >>