漢方薬の6通りの下ごしらえ

薬草である漢方薬は、食材と同じです。産地や質で味も香りも色も異なります。当たり前のことですが効果も異なります。

伝統医学では、原料である生薬の見立てから始めます。 原料生薬は、目で色(五色)を、鼻で香り(五気)を、舌で味(五味)を鑑別します。代々師匠から弟子へ受け継がれた技で選別します。

太陽堂漢薬局での修治(シュチ)、下ごしらえ

太陽堂漢薬局での修治

修治は、現在の日本では殆ど行われていない漢方薬の技術です。 生薬原料の失われつつある技術。本来の漢方では、生薬原料には必ず必要な処理の一つです。 修治は、料理で言えば材料の「下ごしらえ」。太陽堂漢薬局では、修治が成された漢方原料で漢方薬を調合していきます。修治の目的は漢方薬が

  • 飲み易くなります。
  • 効果が上がります。
  • 副作用が減少します。

修治には様々な方法が漢方生薬原料ごとに決められています。 太陽堂漢薬局では

  1. 「炙る」。加熱する事により、熱に弱い成分が分解します。或いは成分が変化します。それにより毒性が減じ効果が上がります。例)酸棗仁、土鼈甲、虻虫、裴虫、水蛭、他。
  2. 「焼く」。牡蠣(ボレイ、牡蠣ガラ)は、牡蠣のアミノ酸が染込んでいます。このアミノ酸は、食中毒やアレルギーの原因になる可能性があります。牡蠣は殻が赤くなり炭化するまで焼きます。焼いて炭化することにより、イオン化しやすくなり吸収率も上がります。
  3. 「紹興酒を吹きかけ、蒸す(熟す)」。お酒は「升」の働きです。お酒で蒸す(熱をかける)事により、漢方生薬の副作用である「降」の働きを消しさります、或いは減じます。同時に漢方生薬の効果を上げます。例)大黄、地黄、牛膝、他。
  4. 「陳なる物」。毒性のある精油成分が入っている生薬原料は、倉庫で数ヶ月以上寝かせます。それにより徐々に精油が抜け毒性が減じるのを待ってから、その後に漢方薬として組んでいきます。例)呉茱萸、陳皮、他。
  5. 「陰干し」。紫外線により変化する成分を減じるため、数ヶ月、陰干しを続けます。それにより柔らかい紫外線により徐々に成分が変化し、毒性を消し効果を上げます。例)麻黄、他。
  6. 「潰す」。つぼみ・種物の生薬の中には煎じても成分が出てこない生薬があります。煎じ薬として調合する前に、あらかじめ鉄鉢で潰します。茵チン、広茂、他。

太陽堂漢薬局の漢方薬「煎じ薬」は、原料から修治を行い漢方薬として調合されます。

漢方薬と六陳八新(リクチンハッシン)

  1. 伝統漢方では、生薬ごとに六陳(古い漢方生薬の方が良い)、八新(新しい漢方生薬の方が良い)という「決まり」が古来より有ります。
  2. 精油その他の成分で、身体に害がある漢方生薬は十分寝かし、精油の揮発、空気酸化等で毒性の無い状態にしてから用います。
  3. また揮発性成分が薬効として必要な生薬は、出来るだけ新しい物を使用します。年(夏場)を越した物は使用せず処分します。
  4. 現在、日本ではこれら先人の経験による教えを無視し、漢方薬が作られる傾向があります。六陳八新は、漢方の修治(シュチ、毒消し、前処理加工)の一つです。この他、修治には様々な方法が有ります。
  5. 太陽堂漢薬局では、患者さんの服用する漢方薬は煎じ薬であっても、処方を組む前に下ごしらえとして、様々な修治が施して有ります。

漢方薬の六陳(リクチン)

  • 呉茱萸(ゴシュユ)
  • 橘皮(キッピ)
  • 狼毒(ロウドク)
  • 半夏(ハンゲ)
  • 枳実(キジツ)
  • 麻黄(マオウ)

以上6種類です。

  1. その他の生薬では、木賊(モクゾク)、大黄(ダイオウ) 、芫花(ゲンカ)、荊芥(ケイガイ)も古い陳の物を使用します。
  2. これらの生薬は単に古ければ古いほど良いと言うのでも有りません。半夏(ハンゲ)、木賊(モクゾク)、橘皮(キッピ)等は、生で青臭い臭いがする間は使用しません。枯れた時点で薬用として用います。
  3. 呉茱萸(ゴシュユ)、枳実(キジツ)等は中程度の古い物が良いです。非常に古い物は返って劣品と成ります。

漢方薬の八新(ハッシン)

  • 蘇葉(ソヨウ)
  • 薄荷(ハッカ)
  • 菊花(キクカ)
  • 赤小豆(セキショウズ)
  • 桃花(トウカ)
  • 澤蘭(タクラン)
  • 槐花(カイカ)
  • 款冬花(カンドウカ)

以上8種類です。八新は新しければ新しいほど良いです。

漢方の醍醐味