漢方の醍醐味・肺癌患者さん

肺癌患者さん

大理の古い町並み

*写真は、大理の古い町並み。風習なども日本人に非常に近い人々が多い、思い出深い町です。この大理で失われた生薬「白蜜(岩蜂蜜)」を発見した時の喜びは大きかったです。

不思議なことがありました。ほぼ同時期にお2人の肺癌患者さんのご相談をお受けしました。お1人は私の次女の同級生のお祖父様です。もう1人は家族付き合いをしていた方のお父様です。偶然ですが、肺癌でお2人とも「後2週間位しか持たない」と宣告されていました。

その頃、私は癌に有効な漢方薬を、糸練功で探せないか研究中でした。現在の「気仙」の原型が出来ていた時期です。お二人同時に漢方治療を開始しました。

3週間後、お1人は力及ばず亡くなられました。もう1人の患者さんは少しづつ食欲が回復し、6ヶ月後、レントゲン上で癌腫の縮小を確認。その後癌腫が消失。退院されました。

4年後、太陽堂漢薬局の前に1台のバスが止まりました。バスから降りた方々がぞろぞろ薬局に入ってきます。びっくりしていると、「先生、ありがとうございました」の声。肺癌から回復された患者さんでした。「全快祝いに親戚皆で旅行した帰り。」だそうです。

実は、患者さんにお会いしたのはこの時が初めてでした。患者さんの喜ぶお顔が眩しく、たまらない気持ちに成ったのを覚えています。

それから数年後平成11年、この患者さんの息子さんが、以前手術した大腸癌からの転移で膀胱癌になりました。約1年の漢方治療で癌腫は消失、病院の検査でも異常なし。その後2年間の再発防止で漢方治療を終えました。

ほぼ同じ条件で同じ治療を施した肺癌のお2人の違い。私の力で治ったわけではないと思います。患者さんが私を信じてくれた。患者さんが将来の夢をお持ちだった。家族が明るく前向きだった。

私には分かりません。でも何かが違ったのです。

忘れられない患者さん

ある時、30代前半の子宮癌の女性の相談を受けました。同じ病室の子宮癌の患者さんが太陽堂漢薬局で良くなられ、その方の紹介で来られました。

放射線治療により子宮と大腸に穴が開いて非常に苦しんでると仰っていました。すでに抗癌剤を打つ体力はなく、モルヒネを投与されていました。彼女は真面目な方で真剣にご自分のお病気と向き合い戦おうとされていました。その姿に打たれ私も真剣でした。

彼女が寝たきりとなり、腫瘍熱で微熱が続きました。私は薬局が閉店時間になると毎晩、車で彼女の家に出かけました。1日の身体の具合、今日は何を食べた、色々な話をし、そして糸練功を取り漢方薬を1日分渡して帰る毎日でした。彼女は私の言うことを良く守り、食欲も無いのに一生懸命食べていました。

3ヶ月ほど経ち、ご主人より「今朝から急に浮腫みだし、夕方に亡くなりました。最後に、『先生にありがとうと伝えて。』と言ってました。」と連絡がありました。全身から力が抜け虚脱してしまいました。

神様は居ないのだと何度も思いました。何年経っても忘れられません。振り返ってみて、私の取り組み方が間違っていたのかもと思っています。

人間は笑うと免疫力が上がります。笑わなくても「笑った振り」をするだけで血流が改善します。逆に、実際に苦しい事や嫌な事が無くても、「しかめっ面の振り」をするだけで血流が低下することが分かっています。

ご自分のお病気に真剣に取り組む人、お病気を医学辞典で調べたり、ご自分のお薬の内容に詳しくなる人、悲観したり、何でもご自分のお病気に結びつける人。

逆に、ご自分のお病気と真正面から向き合わず、趣味や生きがい、夢を持ち、遊びの計画をしている人。

沢山の患者さんに接し、今では後者の方が治りが早いと確信しています。

子宮癌の彼女は真剣でした。その姿を見て私も真剣に成り、私の姿を見て、彼女は更に真剣になっていく。彼女を苦しめたのは、私だったのかもしれません。

小宇宙を子供さんに

新彊ウイグル

*写真は、新彊ウイグル地区。白斑治療の鳩菊を求め、タフラマカン砂漠へ。サフラン・鳩菊の産地でもあります。写真は歓迎で民族舞踊を踊ってくれたウイグル族の女の子と。翌年、3度目のウイグルへ。お土産のぬいぐみを持参し女の子の自宅へ再訪問。

癲癇の男の子の相談を受けました。癲癇の大発作が新生児の7ヶ月より始まり、現在4歳、1日に3~4回の大発作を繰り返しています。発作の影響で脳障害を起こし言葉も喋れず知恵遅れの状態になっていました。病院では発作が激しく、後1年は生きれないと言われたそうです。

この子に煎じ薬と補助剤を選薬しました。漢方薬を服用しても発作は治まりません。しかし糸練功で診ると毎月確実に改善に向け動いています。不安になるご両親に「とにかく信じて、やれるだけやりましょう。」と説得する日々が続きました。

1年を過ぎた頃より1日3~4回あった発作が減ってきだしました。2年が経ち糸練功で診ると10合±に改善しています。この頃よりやっと発作が無くなって来ました。それでも時折思い出したように発作が起こります。

男の子が小学校に入りました。この子は白衣を見ると怖いのか、いつも私から逃げようとしていました。お薬を貰うと走って車に逃げ込みます。4歳よりズート、煎じ薬を飲み続け、この子はこの子なりに一生懸命でした。

ある時、私はこの子を膝の上に載せ抱きしめながらお話をしました。可愛くて仕方がなかったです。

それからです。男の子は表情も明るくなり、薬局に来ると微笑んで寄ってきます。そして、それ以来大発作は起こさなくなったのです。

今では、スポーツが好きで積極的な逞しい男の子になりました。男の子は、今年中学生になります。

治療をする側と患者さんが信じあい一つに成る事が、大事なのかもしれません。

「小宇宙」、それは東洋医学をやる人間にとって魅力的な言葉です。東洋医学では「大宇宙の中に小宇宙があり、更にその中に小宇宙がある」と考えています。

東洋医学の古典「素問四気調神論」には、季節ごとの暮らし方が述べられています。自然が大宇宙ならその中で暮らす人間は小宇宙。小宇宙は大宇宙と調和を取りながら生きていきます。

暑い夏と寒い冬では、生活の仕方が異なって当たり前です。気温が異なれば、周囲の気温に合わし体温を保つため、人間の産熱状態が異なってきます。北海道と九州では食べ物が異なって当たり前です。

調和の取れた状態を「太極」と言います。太極は何も無い状態で調和が取れているのではなく、陰陽が混ざり合い、色々ゴチャゴチャ含んだ状態で調和の取れている状態の事です。

養生は、相反する性質の物を一つにして合わせることです。漢方治療の原則、「不足を補い、有余を瀉す」。代謝が不活発となり冷えた部分には、温める物を。炎症があり代謝が亢進した時には、冷やすもので治療していきます。

熱には寒を、寒には熱を。正反対の相剋(漢方で言う正反対の性質)を与えて調和し、太極・健康にしていきます。

患者さんと治療する側、自然と人間、仲間と自分、そして男と女。

どちらが上でも下でもありません。相反する物が一つに成る。それが東洋医学の小宇宙だと感じています。