漢方の醍醐味・坐骨神経痛すら治せない

坐骨神経痛すら治せない!!

商売で有頂天に成っている頃、身内が坐骨神経痛に成りました。漢方薬のエキス剤を飲ませました。一向に良くなりません。

しばらくすると、その身内は、痛みと痺れが酷くなり、立つ事すら出来なくなりました。整形外科でブロック注射をして頂きましたが、改善しません。結局、入院・手術と成りました。あれほど勉強した漢方で、身内の坐骨神経痛すら治せなかったのです。悔しかったです。

それから1年ほど過ぎ、その身内の坐骨神経痛が再発しました。今度も痛みと痺れが激しく、立つ事も歩く事も出来なくなりました。トイレにも這って行く状態でした。手術から約1年ほどでの再発でした。

わずか1年の間に2回も手術をさせるわけにはいきません。煎じ薬を調合しました。以前勉強した漢方の知識を総動員して・・・。

今度は見事に効きました。トイレも這って行く状態だったのが、見る見る改善したのです。身内は1年ほどの漢方治療で完全に坐骨神経痛が治りました。その後、再発する事もなく。

嬉しかったです。漢方の醍醐味を始めて実感した時でした。

一人になり、会社も処分し漢方の勉強を再開しました。古典、経方、本草学と受験勉強のように毎晩勉強したのを覚えています。

そして、今の太陽堂漢薬局を始めました。いづれ、お客様に役立つ漢方専門薬局を夢見て(1988年)。

腰痛 - 神経痛専門で評判に!

桂林

*写真は、桂林の山と川。この桂林には、私達日本漢方の古典「傷寒論」の原本が残されています。後に、この古代「桂林傷寒論」を広州中医学院の教授よりプレゼントして頂くことになった。

太陽堂漢薬局が、私の田舎・鹿児島国分隼人の地で1989年スタートしました。

身内の立つことも出来ない坐骨神経痛を良くした経験を元に、当初「腰痛・坐骨神経痛専門」で漢方相談を開始しました。

煎じ薬を縦横無尽に使い、補助剤を使って面白いように腰痛・坐骨神経痛が良くなっていきました。「手術でしか良くなりません」と宣言された患者さん、手術をしたけど再発した患者さんが「先生、痛くなくなりました」、「正座が出来るようになりました」、「もう運動が出来るんですよ」。患者さんの声を聞く度に嬉しくてしようがありません。

朝、薬局のシャッターを開けると薬局の前に腰痛・神経痛の患者さんが並んでいるという日が続きました。

漢方の道に入り、人に喜んで頂き、今まで感じた事の無い幸せを感じました。

同時に、本人が「痛くても自力で歩ける間は、漢方で良くなること」、「レントゲン上は改善していないのに痛みや痺れの症状が消失する不思議さ」、「徹底した漢方治療をすると再発は殆どしないこと」を学びました。

痛みが1服で消えた患者さん

漢方相談を始めて3年が過ぎた頃。50歳半ばの女性が腰痛でご相談に来られました。近くの陶器工場で働いていらっしゃるご婦人です。

問診をすると、2~3年前から右足の膝より下の痺れ・両膝の痛み、腰痛、背中と胸の痛みが続いているとの事でした。また4~5年前より足首に水が貯まり整形外科で時々水を抜いているとの事でした。

問診の段階で、冷えと水毒・血虚、陰証で虚証を確認。煎じ薬で当帰四逆加呉茱萸生姜湯を投与しました。

次の日の朝、この患者さんが飛び込んで来ました。「昨夜、漢方薬を煎じて1回飲んで寝たら、今朝は腰の痛みが消えていました」。患者さんも驚いていましたが、私もビックリです。

その後、この患者さんは8日目に背中と胸の痛み・痺れも取れ、両膝と足首の痛みを残すのみと成りました。

15日後に、今度は残った膝の痛みを取るために、防已黄耆湯の加味方を投与しました。

不思議な事は起こるものです。また、飲みだして1週間くらいで今度は両膝(変形性膝関節症)と足首の痛みと腫れが取れたのです。

その後、この患者さんは風邪を引いても下痢をしても太陽堂漢薬局に来られるようになりました。

10年以上過ぎた今でも時々来られます。(2000年当時)

漢方の本や症例報告を見ていると、数は少ないですが時々このような著効例が報告されています。この時、”説明のつかない漢方の不思議さ”に私も始めて経験し驚きました。

その後、同様の著効例を、皮膚病や神経症で何回か経験することと成りました。

中医学との出会い - そして再び漢方古方へ

中国調剤

*写真は、中医学の生薬調剤風景。中医学病院での漢方薬の調剤。左は薬棚、右は投薬口。

その当時の私は、漢方の勉強をしたくて色々な専門書を読み漁っていました。系統立てた勉強をしたくて日本漢方協会にも入りました。

隣の県で行われていた中医学の勉強会に通いだしたのもこの頃です。中医学を勉強して新しい考え方を学びました。今でも臨床上参考になっているのが、「帰経」と「入薬」の考え方です。私の学んだ古方派の漢方理論には殆ど無い理論でした。

でも何かが違ったのです。古方は理屈ではありません。多くの患者さんを通して感覚で学ぶのです。漁師が「雨が降る」と言えば、天気予報は晴れでも雨が降るのです。

ある人が、「昔はどの町にも名医が居た。患者さんが遠方から訪ねてくる名医が居た。今は、何処も検査結果を元に同じ薬が出る。」と言ったのを思い出します。今流行の漢方はそれに似たところが有ります。

結局、私には古方しか肌に合いませんでした。この頃には、漢方の世界で古方をやる人間は殆ど居なくなっていました(1990年頃)。古方は、教科書では勉強できないのです。自分の目と五感で学ぶのです。古方には師匠が必要だったのです。